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あなたとあなたの大切な家族のために、 知って得する病気の話~現代の国民病〝糖尿病〟

医療法人社団福祉会 高須病院 看護部 副看護部長
 糖尿病看護認定看護師 日本糖尿病療養指導士
 兵頭裕美

正しく知ろう! 現代の国民病〝糖尿病〟

みなさんは糖尿病についてどんなイメージをお持ちですか?糖尿病に対するイメージは人によってさまざまです。その名の通り「尿に糖が出る病気」だと信じ込んでいる人もいれば、「全然知らない」「自分には関係ない」という人もみえるかもしれません。食生活やライフスタイルの近代化に伴い、わが国でも糖尿病患者が増加しています。平成24年の厚生労働省国民健康・栄養調査では、日本で「糖尿病が強く疑われる人」は950万人、「糖尿病の可能性が否定できない人」は1100万人と推定されています(図1)。両方を含めると成人の5人に1人の割合となり、まさに「糖尿病は他人事ではない!」ということになります。

糖尿病は「インスリン(血糖値を下げるホルモン)の作用不足による慢性の高血糖を主徴とする代謝症候群」と定義されています。つまり、すい臓から出るインスリンの作用が不足し、食べた食物が消化・吸収された後に本来収まるべきところに収まらず、血液中にブドウ糖があふれてしまい、この高血糖状態が続くことで長期的にさまざまな障害(合併症)を引き起こすことになる、これが糖尿病です。

「口渇・多飲・多尿・体重減少・易疲労感」が高血糖の代表的な症状と言われていますが、自覚症状として感じにくいこともよくあります。しかし「糖尿病といわれたけど痛くもかゆくもないし、大丈夫」と考えると大変なことになります。糖尿病で怖いのは、さまざまな障害(合併症)を起こすことです。合併症は、三大合併症と言われる網膜症(目の障害)、腎症(腎臓の障害)、神経障害のほかにも、図2のように全身に障害を起こします。さらに最近では、高齢糖尿病患者の認知症のリスクは非糖尿病患者の2~4倍であることもわかってきました。

これらのことから、糖尿病治療の目標は、血糖・体重・血圧・血清脂質の良好なコントロール状態を維持することで、合併症を発症させない・進行させないこととなります。そうすることで、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持と寿命の確保をします。

image001図1

image002図2

 

実は「糖尿病治療=健康生活」 なのです

糖尿病の治療は「食事療法」「運動療法」が基本となり、そのうえで必要な場合に「薬物療法」を行います。「療法」というとなにか特別なことをするように思いがちですが、「食事は栄養が偏らないように適量をバランスよく食べ、運動不足にならないようにふだんから体をよく動かす」ことが基本です。これは、糖尿病患者さんでなくても健康的な生活の基本ですよね?つまり、糖尿病治療の基本は、「健康的な生活」なのです。糖尿病といわれてしまったから「自分だけが食べたいものも食べられない」のではなく、たとえば「糖尿病の診断が自分を含めた家族の健康生活について振り返るきっかけになった」と考えるだけで、ちょっと頑張れそうな気がしませんか?

 

よい情報・わるい情報?

巷では健康情報が氾濫しています。役に立つ情報もあれば、ちょっと怪しいなという情報もあります。過去の健康ブームを例に挙げてみましょう。1975年の「紅茶きのこ」に始まり、「酢大豆」「野菜スープ」「ココア」「低インスリンダイエット」「カスピ海ヨーグルト」「にがり」「寒天」「納豆」…いずれも〝ダイエットに効く〟〝血糖値をさげる〟などとブームになったので、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?私自身、納豆が嫌いで食べられないにもかかわらず、納豆ブームの際には「やせられるなら食べてみようかな?」とつい思ってしまったくらい、テレビ番組での紹介の仕方は巧みでした。しかし実は糖尿病治療に関しては、健康ブームに乗って熱心にあれこれ試している人ほど、食事療法がおろそかになり血糖コントロールもよくないというデータもあるので要注意です。もちろん、すべてが悪い情報ばかりではないかもしれませんが、思わず試してみたい情報に遭遇したら、「信じる者は誰かを儲けさせている(信+者=儲)」という言葉を一度思い出して考えてみてください。

 

「健康に良い」の勘違い、あるある!

図3を見てください。メニューAのように、ひとつひとつはヘルシーであっても、組合せによってはカロリーオーバーになってしまうことがあります。メニューBはご飯の量もAより多く、肉、果物を食べてもカロリーは半分です。これが「健康に良い」の勘違いです。健康に良いと思って摂りすぎている食品としてありがちなものの例として、牛乳・ヨーグルト・チーズなどの乳製品、ゴマ・落花生(たった14粒でご飯半杯ほどのカロリー!)などがあります。そうめん・豆腐・スイカなどあっさりした食品は低カロリーと思いがちです。「白砂糖はだめでも黒砂糖・はちみつはいい」というのも勘違いです。サンマ・サバなどの青魚は、コレステロールを下げるよい油が入っていますがカロリーは高めなので要注意です。目に良いからとブルーベリージャムを摂りすぎて血糖値が上がってしまった人もいました。一番簡単な食事療法は、「健康に良いと思って摂りすぎている食品をやめること」かもしれません。

これは、食事に関するほんの一例ですが、「健康に良いと思って頑張ってきたのに」とがっかりしている人がみえるかもしれません。でも、それだけ自分やご家族の健康を真剣に考えているということなので、がっかりする必要はありません。そして、「今頑張っていることが間違った情報ではないか」確認することからもう一度始めましょう。

image003図3

 

糖尿病のプロがいます! ご相談ください

当院では、糖尿病療養指導のプロフェッショナルである日本糖尿病療養指導士資格を持つ看護師・管理栄養士をはじめ、医師・理学療法士・薬剤師・臨床検査技師など多職種からなるチームで糖尿病患者さんのご相談に対応しています。糖尿病患者さんが楽しく体験しながら病気や食事・運動について知ることができる「糖尿病教室」「糖尿病食試食会」も定期開催しています。「じゃあ実際どうすればいいの?」と戸惑っている方は、ぜひご相談ください。「糖尿病の指導」と聞くと「堅苦しいもの」「あれダメこれダメと言われてやる気がなくなるもの」「難しくてとてもできないもの」というイメージが変わります!変えてみせます!「来てみてよかった」「ちょっと頑張ってみようかな」と思ってもらえるお話をさせていただきます!

 

 


引用・参考文献:

①矢作直也・大西由希子著:「メディカルるるる 糖尿病編」:株式会社SCICUS:2014
②坂根直樹著:「Dr.坂根のやる気がわいてくる糖尿病ケア」:第1版:医歯薬出版株式会社:2009
③日本糖尿病療養指導士認定機構編:「糖尿病療養指導ガイドブック2014」:第1版;株式会社メディカルレビュー社:2014

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