介護制度について考える28
介護保険サービスを活用した、母の一人暮らし
ホームヘルパーの専門性
父がグループホームに入居し、母は一人自宅で暮らす日々を送っていました。要介護の父と母がもたれ合うように暮らしていたころに比べると、むしろ母一人だけのほうが安定していました。
ホームヘルパーが週に三回、一回四十五分ですが来てくれて、掃除や洗濯、調理の下ごしらえなどを手伝ってくれます。母自身でもできますが、ヘルパーの手助けがあることで家事全般の質が向上します。ヘルパーにすべて委ねるのではなく、できることは本人がやり、足りない部分をヘルパーが補う。母のような軽度の要介護者にとって、そうした「補足型」の援助が役に立ちます。また、自立して生活を送る意識付けにもなります。
ヘルパーに家事を委ねることで、長年やってきた主婦の役割を奪われるように感じる女性が多いと言われます。そうした利用者の気持ちに寄り添い、共同作業として家事を進めることこそヘルパーの専門性であると感じます。
ホームヘルパーはかつて「家庭奉仕員」と呼ばれ家事仕事を手助けする専門性の低い仕事と思われていましたが、家事を通して、要介護者の心身と生活自立を支える専門職です。けっして誰にでもできる仕事ではありません。
健康管理は訪問看護師と
母が日常生活を送るためには家事の援助だけでなく健康管理の支援も欠かせません。そこでホームヘルパーに加え、訪問看護にも来てもらっていました。訪問看護も介護保険のサービスのひとつです。看護師が自宅へやってきて、医師の支持の下で健康の管理や療養のチェックをしてもらいます。母は脳梗塞がもとで要介護になりましたし、それ以前から糖尿病を持っています。血圧も不安定です。自分で自分の健康を守るのは基本ですが、母にはそのための知識も情報もありません。そんな母にとって、訪問看護は大切な支えになっています。
訪問看護師は週に一度やってきます。まず、血圧や脈拍、顔色などの様子を見ながら体調全般のチェックをします。それから一週間の服薬をちゃんと間違えずにやっているかをチェック。そして向こう一週間ぶんのクスリを、飲み間違えないよう朝昼夕に分けて「週間投薬カレンダー」にセットしてくれます(写真)。
また、母が月に一度通院している病院の医師とも連絡を取り、母の様子を伝えるとともに意思疎通のサポートをしてくれます。病院では医師や看護師とゆっくり話している時間もありませんが、週に一度、顔を合わせて健康上の不安や疑問を話せることが訪問看護の大きな魅力です。
機能訓練中心のデイサービスを利用
さらに母は、父がグループホームに入居してから週に一度デイサービスに通い始めました。母はどうせ行くなら機能訓練のできるデイサービスが良いと希望し、ケアマネジャーが見つけてくれました。そこのスタッフには柔道整復師が多く、サービスメニューはトレーニング機器を使った機能訓練が中心です。一人で自宅にいるとどうしても運動が不足します。週に一度、専門スタッフの指導で身体を動かせるこのデイサービスを母は大いに気に入りました。