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ワライフ認知症講座 第13回

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認知症講座0

介護者から見た認知症介護

だれのための介護か

 今回は認知症介護の特殊性を考えたいと思います。基本は、認知症になっても、その人らしい生活を送ることができる様にする必要があります。
 最近では、ユマニチュード、ナラティブケア、バリデーションなど、様々な認知症ケアが注目を集めており、各地で盛んに研修会が開催されています。
 どのケアもとても素晴らしく、認知症介護を行う上では必須となるでしょう。もちろんどのケア方法も本人を中心に捉えることが基本となります。
 ただし注意点もあります。筆者も多くの認知症介護家族を支援している経験から、自宅で認知症介護をしている家族へ、それらのケア方法が一番大切であると言い切ってはいけない事です。なぜなら、介護施設等で従事しているスタッフであれば、職業としてより良いケアを勤務時間内で提供する事が求められますが、自宅で介護する家族は24時間なのです。様々な周辺心理症状が出現している方を、24時間笑顔で介護し続けることは結果として忍耐介護となり、「もう限界」となってしまう恐れがあるからです。認知症介護の特殊性として考えなければいけないことは、「本人の後ろにも目を向ける」ということです。夫や妻、子供、お嫁さん、孫など、自宅では認知症介護について知識を持たない家族が常に介護をしているのです。
 その家族にプロ並みのケアを要求してしまうと自宅での介護は続きません。近年では介護施設でも同じような現象が起こっているのです。慢性的に人手不足である介護業界では、未経験のスタッフが一定の研修もなく責任ある業務を行っています。その結果様々な事故や事件が多発しているのです。

家族が倒れたらどうなるか

 認知症ケアの中で、非薬物療法というものがあります。その人を中心に様々な介護技術でケアを行い、薬は使わずに介護するというものですが、薬を使わずに問題なく、また介護者の負担なく介護が行えれば誰にとっても一番良い事ですが、現実には簡単ではありません。
 例えば、ピック病の症状の一つで、暴言や暴力といった症状は、認知症介護では危険を伴います。介護技術だけでは限界があるのです。自宅で介護をしている家族は「今、今晩、明日」、困っているのです。それらの問題を解決するには「適切な医療」が必要になります。もちろん薬だけでは解決になりませんが、介護している家族は上手に医療を利用すれば、今を乗り越えることができるでしょう。
 まずは認知症を病気として捉える必要があります。胃が痛めば胃薬、頭痛が強ければ頭痛薬が処方されます。それでも認知症には非薬物療法であると考える方は、安全な認知症医療の知識が足りないと言わざるを得ません。その要因として、認知症医療の歴史の浅さがあり、確立された治療法がないこと、向精神薬に対する過剰な拒否があります。
 それらを解決する一つの方法がコウノメソッドで提唱されている「家庭天秤法」なのです。24時間患者を観察できない医師とは違い、常に状態を把握できる家族に医師が指示を行い、多ければ減らす、少なければ指示通りに増やす、といった調整を家族も含めておこなっていくというものです。家庭天秤法を上手に行うことができれば、自宅での介護が楽になる事が多くあります。
 もし、家族が倒れてしまったら、どれだけ本人を中心に良いケアを行っていても、住み慣れた自宅で住みつづけることはできません。介護と医療の両輪をしっかりと近づけることで、無理のない認知症介護が実現できるのです。それには介護者が知識を身に着け、賢くならなければいけません。
 9月24日に開催される「認知症ケア実践塾」では、実際のケースで行われた家庭天秤法を例に、どのように認知症医療と関わっていく必要があるかを説明いたします。

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