親の介護 アルツハイマーの母から学んだこと その十三
親の介護 アルツハイマーの母から学んだこと その十三
子どもから教えられる母の優しさ
母の入院後、子どもたちからの母の思い出話を耳にし、私自身いろいろなことを思い出したり、考えたりすることが多くなりました。母の優しさをわが子から教えられる思いです。風邪で熱を出し食欲がないときに摩り下ろしたりんごを搾り作ってくれたリンゴジュースの味、夜なべ仕事で遅くまで内職の着物を縫っていた姿、家族で出かけた大阪万博などなど私の幼い頃の思い出が脳裏に浮かびます。今更ながら母が私に対し「してくれたこと」を思い返します。
離れて暮らし見えてくるもの
私は生まれてから一度も実家から出て暮らした経験がなく、結婚後も親と同居し、常に母と一緒に暮らしていていました。未熟な私は自らの「親子関係」「親の愛情」などといったことを殊更に考えたことはありませんでした。おそらく母が元気で一緒に暮らしていたら今のよいうに母に対し思いを馳せることはほとんどなかったのではないかと思います。遅きに失しますが母がアルツハイマーという病気になり、離れて暮らすようになって私が見えてきたこと、感じてきたことばかりです。
「してくれたこと」ばかり、「してあげられたこと」がない
思い返すと母からは「してくれたこと」ばかりで、逆に私が母に「してあげられたこと」はほとんどないことに自分でも愕然とします。口うるさい母に反抗ばかりし疎ましく思い、毛嫌いしてきた私でした。成人してからも表面的には出さなかったものの心の中ではその感情は変わっていませんでした。「感謝の念」を持つこともなく、あまりにも幼稚なまま大人になってしまいました。今は私が母に対して抱いていた感情が如何に間違っていたかを身にしみます。
孫たちの心にいつまでも「おばあちゃん」
母が私に「してくれたこと」を思うようになり、では私は我が子に対し「何ができているだろか」と自問するようにもなりました。いつか母は子どもの私や私の子である孫たちのことは忘れてしまうでしょう。けれども生まれたときから一緒だった孫たちの心にはいつまでも「おばあちゃん」は存在し続けるだろうと思ったのです。