フットケア~足の合併症はあなたのお手入れしだい~
「糖尿病足病変」ってなに?
糖尿病足病変とは、糖尿病合併症による神経障害・足の血流障害や高血糖による抵抗力低下などの要因が相互に関係しあって発症する足病変をいいます。たとえば、白癬(水虫)、胼胝(たこ)、鶏眼(うおのめ)、潰瘍、足の変形などがあります。
なぜ足病変が起こるの?
糖尿病は血液中の糖分が多く、血糖値が高い状態にあります。この状態を高血糖といいます。糖分には車のガソリンのような役割があり、身体のエネルギー源としてとても大切なものです。しかし高血糖の状態だと血液がドロドロになり血流が悪くなるだけでなく、身体の防御機能を弱めてしまい感染を起こしやすくなります。
また、糖尿病の合併症である神経障害によって、知覚神経や運動神経、自律神経が障害されます。知覚神経が障害されると、足の感覚が鈍くなったり失われたりするため、健康な人であれば痛みを感じるような傷があっても気づきにくくなります。そのため、傷の発見が遅れたり、放置されがちになり、細菌などの病原体が侵入しやすくなります。
運動神経が障害されると、筋肉が萎縮するため、関節の足の支持力が低下し、歩行の異常や足や関節の変形が起こり足底圧の異常が生じやすくなります。
自律神経が障害されると、動静脈シャントは開いたままで、皮膚表面の血流が増加します。局所的に骨への血流が増加すると骨吸収が増加し、骨の破壊や亜脱臼が生じて足の変形が起こります。その一方で、皮膚の栄養をつかさどっている毛細血管の血流が低下し、栄養状態が悪化します。
また、自律神経障害には内臓などの動きやホルモンの分泌を調節する働きがあります。それが障害されることによって、発汗異常が生じ、上半身は発汗が多く、下半身は発汗が少なくなります。足の発汗が少なくなることで、皮膚が乾燥し、皮膚が硬くなったり、亀裂が生じやすくなり、皮膚の自浄作用や感染防御機能が低下するため、感染が起こりやすくなります。
なぜフットケアが必要なのか?
糖尿病によって知覚神経障害や血流障害が起こると、小さな傷がきっかけで足潰瘍へと発展してしまうことがあります。それは、知覚障害によって小さな傷の存在に気付かず放置し、傷口から感染を起こしてしまい、さらに血流障害があることで傷が治りにくいため、足潰瘍や足壊疽に至ってしまう可能性があるからです。
そのため、正しい知識を持って毎日の足のお手入れをすることで、糖尿病足病変の発症予防や早期発見・早期治療につながり、足潰瘍や足壊疽を防ぐことができます。
正しい足のお手入れ方法
①足の観察を行う(左ページの観察チェックリスト):
靴擦れ、低温やけど、たこ・うおのめの自己処置、巻き爪・爪の変形、爪が足の指にあたる部分などが足の傷の原因になることが多いです。
②日ごろの注意点:
日ごろからお手入れができているか、抜けがないか、左ページのお手入れのチェックリストを参考に確認してみましょう。
また、暖房器具を使用する際には低温やけどに注意が必要です。
足の観察チェックリスト
かかとはガサガサ乾燥したり、ひび割れを起こしていませんか?
□ かかとや足の甲、足の指の側面は靴擦れを起こしていませんか?
□ 足の裏や足の指先・指には、たこ・うおのめのように皮膚が硬くなっているところは
ありませんか?
□ 皮膚が硬くなっているところをおさえるとブヨブヨしたり、痛みがありませんか?
□ 皮膚が硬くなっているところが赤黒く内出血を起こしていませんか?
□ 足の裏が乾燥したり、かゆみがある、または皮膚がぽろぽろ落ちたりしませんか?
□ 足の指の間の皮膚がジクジクしていたり、皮膚がめくれたりしていませんか?
□ 爪が分厚くなっていませんか?
□ 爪が皮膚にくいこんでいませんか?
□ 爪の周囲が赤くなっている、腫れている、熱っぽい、または痛みなどがありませんか?
□ 足のむくみはありませんか?
□ 足は冷たくありませんか?
□ 足の色は悪くありませんか?
上記チェックリストのなかに1つでもあてはまるものがあれば、医師や看護師に相談しましょう
足のお手入れのチェックリスト
・足の指の間も忘れず洗いましょう(軽石やたわし、ナイロンタオルは使用を避けます)
・水気はゴシゴシこすって拭き取らず、押さえ拭きをしましょう
・足白癬症(水虫)がある場合は薬を塗りましょう
・かかとや皮膚が硬くなっているところには重点的に保湿クリームを塗りましょう(足の指の間は塗らないようにします)
・たこやうおのめをカミソリやカッターなどで削ったり、スピール膏(イボコロリ®など)の使用はやめましょう
・爪は角を落とさず、直線に切るようにしましょう(スクエアカット)
・靴下を履きましょう、足はよく汗をかくので毎日取り替えましょう
暖房器具を使用するときの注意点
・貼るタイプや靴の中に入れるタイプのカイロは使用しない
・布団の中に暖房器具を入れたまま寝ない(寝る前に前もって温めておき、寝るときには暖房器具の電源を切り、取り除く)
・暖房器具を直接肌に触れさせないようにする
・長時間の使用は避ける
・暖房器具の設定温度は[弱]か[低]で使用する
・温度を手で確認する(熱いと感じたときはすぐに使用を中止する)
・皮膚が赤くなったり、水疱ができたときはすぐに病院を受診する