「放課後等デイサービスガイドライン」のポイント
WEBワライフ「『放課後等デイサービス』って知ってますか?」では、おもに「放課後等デイサービス」の概要をご紹介しました。今回は2012年に策定された厚生労働省「放課後等デイサービスガイドライン」のポイントをお伝えします。
放課後等デイサービスガイドライン ―総則―
「ガイドライン」には、放課後等デイサービスの支援の基本的事項が記された総則と、サービスに携わる職員の専門性についてまとめたガイドライン、具体的には「設置者・管理者向けガイドライン」「児童発達支援管理責任者向けガイドライン」「従業者向ガイドライン」があります。
以下に総則のポイントをあげました。
基本的役割
- 子どもの最善の利益の保障
- 共生社会の実現に向けた後方支援
- 保護者支援
基本的姿勢
- ●子どもの支援に相応しい職業倫理を基盤として職務にあたる。
- ●一人ひとりの状態に即した放課後等デイサービス計画(=個別支援計画)に沿って発達支援を行う。
- ●保護者が子どもの発達に関して気兼ねなく相談できる場になるよう努める。
- ●学校と連携を積極的に図ることが求められる。
- ●不登校の子どもについては、学校や教育支援センター、適応指導教室等の関係機関・団体や保護者と連携しつつ、本人の気持ちに寄り添って支援していく。など
基本活動
子ども一人ひとりの放課後等デイサービス計画に沿って、次の基本活動を複数組み合わせて支援を行うことが求められるとされています。※下記の「基本活動について」の項をご参照ください。
- 自立支援と日常生活の充実のための活動
- 創作活動
- 地域交流の機会の提供
- 余暇の提供
組織運営管理
- 適切な支援の提供と支援の質の向上
- 説明責任の履行と、透明性の高い事業運営
- 様々なリスクへの備えと法令遵守
ガイドラインに基づく自己評価 (2017年4月公表の義務化)
「事業者向け放課後等デイサービス自己評価表」
「保護者等向け放課後等デイサービス評価表」
の2種類があります。
当初の「ガイドライン」では「…放課後等デイサービス事業所における自己評価の際に活用されることを想定しており、各事業所は自己評価の結果を踏まえて、事業運営の改善を図るとともに、結果についても利 用者や保護者に向けて公表するよう努めなければならない。…」とされていましたが、2017年4月からは、質の評価及び改善の内容をおおむね1年に1回以上の公表が義務化されました。
「事業者向け放課後等デイサービス自己評価表」及び 「保護者等向け放課後等デイサービス評価表」について 厚生労働省
以上が総則にあるポイントです。「ガイドライン」では、その他に「設置者・管理者向けガイドライン 」「児童発達支援管理責任者向けガイドライン」「 従業者向けガイドライン 」の各項があります。後の項でポイントのみご紹介しましたのでご参照ください。
ガイドラインの基本活動について
基本活動をもう少し詳しく見ていきます。「ガイドライン」では次のように記されています。
1自立支援と日常生活の充実のための活動
子どもの発達に応じて必要となる基本的日常生活動作や自立生活を支援するための活動を行う。子どもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにする。将来の自立や地域生活を見据えた活動を行う場合には、子どもが通う学校で行われて いる教育活動を踏まえ、方針や役割分担等を共有できるように学校との連携を図りながら支援を行う。
2創作活動
創作活動では、表現する喜びを体験できるようにする。日頃からできるだけ自然に触れる機会を設け、季節の変化に興味を持てるようにする等、豊かな感性を培う。
3地域交流の機会の提供
障害があるがゆえに子どもの社会生活や経験の範囲が制限されてしまわないように、子どもの社会経験の幅を広げていく。他の社会福祉事業や地域において放課後等に行われている多様な学習・体験・交流活動等との連携、ボランティアの受入れ等により、積極的に地域との交流を図っていく。
4余暇の提供
子どもが望む遊びや自分自身をリラックスさせる練習等の諸活動を自己 選択して取り組む経験を積んでいくために、多彩な活動プログラムを用意し、ゆったりとした雰囲気の中で行えるように工夫する。
では具体的にはどのような内容の取り組みがされているかご紹介します。
具体的な活動の例
ガイドラインの基本活動にもとづき、各事業所で多彩な取り組みがされています。以下にあげた例の以外にさまざま活動が行われています。習い事や創作活動を主にしたところ、自立した日常生活をするための訓練を重視するところ、自由に宿題をしたり遊んだりする時間を多く取り入れたりするところなど、事業所ごとに特色があります。。
具体的には…
- ●粘土による造形、書道や絵画
- ●掃除や料理、服の畳み方などの訓練
- ●ひらがなの書き方、計算、宿題などの学習
- ●ドミノゲーム
- ●運動や体幹機能訓練
- ●調理実習
- ●宿題や勉強などの学習
- ●園芸や農耕
- ●集団でのゲームやクイズ
- ●絵や手紙などを書いて発表する
- ●工場などへの社会見学
- ●お菓子作り
- ●クリスマスなどのイベントに使う物の作成
- ●ミニ会議(簡単なルール決めや確認)
- ●宿題や自分の興味のある学習
- ●トランポリンゲーム
- ●楽器演奏や仲間での合奏
- ●就労のためのパソコン作業の訓練
- ●地域との交流、地域活動
- ●ゲーム形式での自己紹介
- ●動物園、植物園、水族館へ見学 などなど
日常生活で必要な能力を身につけるソーシャルスキルトレーニングや集団よるコミュニケーションスキルの向上のトレーニングなどを行っています。
専門的な療育を行っている施設もあります。行動面、学習面、コミュニケーション面などさまざまな面から個人に合わせ、ソーシャルスキルトレーニングや独自の療育プログラムを行っているところもあります。作業療法士など専門資格を持っている人がいる施設もあります。
利用される方は、事前に見学に行くなどして、各事業所の特色が利用するお子さんに適しているかどうかかを調べることが重要です。
職員の専門性について書かれたガイドラインについては主な項目のみご紹介します。詳しくは厚生労働省の「放課後等デイサービスガイドライン」をご覧ください。
設置者・管理者向けガイドライン
(1)子どものニーズに応じた適切な支援の提供と支援の質の向上
- ① 環境・体制整備
- ② PDCAサイクル(※)による適切な事業所の管理
- ③ 従業者等の知識・技術の向上
- ④ 関係機関・団体や保護者との連携
(2)子どもと保護者に対する説明責任等
- ① 運営規程の周知
- ② 子どもと保護者に対する、支援利用申込時の説明
- ③ 保護者に対する相談支援等
- ④ 苦情解決対応
- ⑤ 適切な情報伝達手段の確保
- ⑥ 地域に開かれた事業運営
(3)緊急時の対応と法令遵守等
- ① 緊急時対応
- ② 非常災害・防犯対策
- ③ 虐待防止の取組
- ④ 身体拘束への対応
- ⑤ 衛生・健康管理
- ⑥ 安全確保
児童発達支援管理責任者向けガイドライン
(1)子どものニーズに応じた適切な支援の提供と支援の質の向上
- ① 放課後等デイサービス計画に基づくPDCAサイクル等による適切な支援の提供
- ② 従業者及び自らの知識・技術の向上
- ③ 関係機関・団体や保護者との連携
(2)子どもと保護者に対する説明責任等
- ① 子どもと保護者に対する運営規定や放課後等デイサービス計画の内容についての丁寧な説明
- ② 保護者に対する相談支援等
- ③ 苦情解決対応
- ④ 適切な情報伝達手段の確保
(3)緊急時の対応と法令遵守等
- ① 緊急時対応
- ② 非常災害・防犯対応
- ③ 虐待防止の取組
- ④ 身体拘束への対応
- ⑤ 衛生・健康管理
- ⑥ 安全確保
- ⑦ 秘密保持等
従業者向けガイドライン
(1)子どものニーズに応じた適切な支援の提供と支援の質の向上
- ① 放課後等デイサービス計画に基づくPDCAサイクル等による適切な支援の提供
- ② 研修受講等による知識・技術の向上
- ③ 関係機関・団体や保護者との連携
(2)子どもと保護者に対する説明責任等
- ① 保護者に対する相談支援等
- ② 苦情解決対応
(3)緊急時の対応と法令遵守等
- ① 緊急時対応
- ② 非常災害・防犯対応
- ③ 虐待防止の取組
- ④ 身体拘束への対応
- ⑤ 衛生・健康管理
- ⑥ 安全確保
※PDCAサイクルとは… Plan(計画)、Do(実行)、 Check(評価)、Act(改善)で構成される一連のプロセスのことです。
「ガイドライン」には「事業所の運営方針や、放課後等デイサービス計画、日々の活動に関するタ イムテーブルや活動プログラムについて、その PDCAサイクルを、設置者・管理者、児童発達支援管理責任者、従業者の積極的な関与のもとで繰り返し、事業所が一体となって不断に支援の質の 向上を図ることが重要である。 」と明記されています。
WEBワライフ「『放課後等デイサービス』って知ってますか?」