【医療】あなたの目を大切に(平成25年初夏号掲載)
■あなたの目を大切に
目 がかすむ、近くのものが見えにくくなる、といった症状で初めて老いを感じた方も多いのではないでしょうか?早い人では40歳くらいからはじまる老眼は、長 生きすれば皆避けられないもの。ここでは老眼以外にも気をつけておきたい目のトラブルを取り上げ早期の発見と治療に役立ててほしいと思います。
■老眼とは
眼 球の水晶体を支える毛様体という筋肉が、加齢によって硬くなり機能しなくなる、または水晶体自体の弾力性が失われてしまうことで起こる症状です。小さい文 字が見えにくかったり、暗いところで物が見えにくいなどの自覚症状が一般的ですが、肩こりや首のこりなどを訴える人もいます。
症状が進めば老眼鏡、となりますが眼球トレーニングや目に良い栄養素を積極的に摂ることで改善が期待できます。なお老眼の進行はだいたい65歳くらいで止まります。
■白内障
白 内障は長寿の代償ともいわれる身近な視力障害です。60代で約70%、80代ではほぼ100%が発症します。白内障の原因は眼球の水晶体内のタンパク質が 増えて水晶体が濁ってしまうことで、目の縁の部分から中央にかけて「すりガラス」ごしのような、視界のぼやけた部分が現れます。軽度の場合は点眼薬や飲み 薬、重度になると手術が必要になります。
白内障手術は一般的に水晶体のにごりを取り除く「超音波水晶体乳化吸引術」後に人工の水晶体「眼内レンズ」を挿入するもの。近年では安全性・確実性ともに格段に上がってきており、入院なしで日帰り手術が可能ですし、医療保険対象内ですので手術を受ける人が大半です。
■糖尿病の人は眼科検診を
糖 尿病の合併症の一つに「糖尿病性網膜症」があります。高血糖で目の血管に負担がかかり網膜が侵されます。成人の失明原因の上位で70歳以上に多く見られま す。進行すると「糖尿病性増殖網膜症」となり、網膜の広範囲で血流が停滞し、新しい血管が発生することで目のかすみや飛蚊症が現れます。この段階では、 レーザーで血管を固める治療が一般的です。糖尿病と診断されたら、直ちに眼科で検査をうけましょう。
■気をつけたい「飛蚊症」「緑内障」「加齢黄班変性症滲出型」
「飛 蚊症」は視界に糸くずや虫のような浮遊物がみえて、目を動かすとそれにつれて移動する、〝蚊が飛んで見えるような〟症状が特徴です。原因は水晶体のにごり ですが、生理的なもの(注1)や加齢が引き金となっている場合があります。ですが、先述の糖尿病起因の場合もありますので、浮遊物が多くなるといった変化 があれば眼科を受診することをおすすめします。
眼圧が上昇し視神経に障害が起き、視野が狭くなって最終的に失明してしまうのが「緑内障」です。自覚症状がないので定期的に検査を受けて早期発見、早期治療を心がけましょう。
「加齢黄班変性症滲出型」は喫煙、栄養不足が原因で発生した新生血管から網膜に血液や滲出液が漏れることで、突然視力が落ちたり、物が歪んで見えたり、視野の中心部が欠けてしまうような症状が現れます。投薬・点眼薬・レーザー凝固などで進行をくい止めます。
な んでも病気は早期発見・早期治療が大事ですが、特に眼科の疾病に関しては非可逆的(元に戻らない)で進行の早いものもあり、失明すれば五感の一つを失うこ とでその後のQOL(生活の質)に大きく影響します。いつまでもクリアな視界でいられるように、定期的に検査を受けましょう。
異変があれば、ちょっと気になる程度でも念のため受診しておくことが、最悪の結果を防ぐ1番の方法だと思います。
注 1)紫外線やブルーライト(可視光線の中で最も強いエネルギーをもっているといわれています。テレビやパソコンなどの画面からも出ており、最近問題視され ています)を浴びたり、ストレスを受けると、硝子体内で発生した活性酸素が硝子体を変質させ、これが元で飛蚊症を発症することがあります。こういった原因 から起きた飛蚊症は、「生理的飛蚊症」といわれます。