【介護】介護保険改正 今年4月から施行『地域包括ケアシステム』がキーワード(平成24年7月号掲載)
介護保険改正 今年4月から施行『地域包括ケアシステム』がキーワード
豊橋創造大学大学院健康科学研究科長・教授 産業政策研究所・教授 後藤勝正氏
介 護保険制度は、2000年に創設。その後、大きな見直しが2回行われつつ、今年で施行後12年が経過しました。サービスの利用者数は施行当初の約3倍、 400万人を超えています。今後も続く高齢化の傾向への対応、介護の担い手の確保…そういった諸問題の解決のため、介護保険制度の改正が2011年6月に 公布、このほど施行されるに至りました。
2012年改正のキーワードは、『地域包括ケアシステム』。
【地域包括ケアシステムについて】
ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するため、医療や介護、予防のみならず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏)で適切に提供できるような地域での体制と定義する。
その際、地域包括ケア圏域は「おおむね30分以内に駆けつけられる圏域」を理想的な圏域として定義し、具体的には中学校区を基本とする。(「地域包括ケア研究会報告書」より)
つまり、中学校区程度の範囲内を基本に、個々人に合ったサービスや取り組みがスムーズに行われるということです。
①医療と介護の連携強化
□24時間対応の定期巡回・随時対応型サービスを創設
高齢者の在宅での生活を支えるため、日中・夜間を通して、訪問介護と訪問看護が密に連携しながら行うサービスです。従来の在宅ケアでは、ホームヘルパーが 家を訪れ、身の回りの世話などをまとめてしていくという形となっています。しかし、このままの状態では、介護状態の重くなった高齢者に柔軟な対応をとれな いこともあります。
新しいサービスでは、1日のうちに数回に分けて家を訪れてもらい、そのたびに短時間での世話を行ってもらう、定期巡回訪問という形をとります。また、緊急時にはオペレーションセンターに連絡を入れることで、随時に対応することもできるようになっています。
□複合型サービスを創設
小規模多機能型居宅介護と訪問介護など、複数のサービスを組み合わせて提供できる複合型の事業所が創設されました。これによって、利用者は柔軟に、医療 ニーズにも対応した小規模多機能型サービスなどの提供を受けられるようになります。なお、複合型サービスはこれを行う事業所側にも体制が作りやすいなどの 利点があります。
□介護予防・日常生活支援総合事業について
市町村の判断により、介護認定で「要支援」となった方や、「要支援」と「非該当」を行き来する方向けの介護予防・日常生活支援のためのサービスを総合的に 実施できる制度が創設されます。事業導入を決めた市町村では、地域包括支援センターなどが利用者の状態や意向に応じて、総合サービスを利用するのかを判断 します。介護予防、生活支援(例えば、配食、見守りなど)、権利擁護、社会参加も含めて、市町村主体で多様なサービスを提供することとなります。
②介護人材の確保とサービスの質の向上
たんの吸引や経管栄養(胃ろう・腸ろう)といった、日常生活を営む上で必要な行為のうち、医師の指示の下に行われるものを介護職員が実施できるようになり ました。ここでいう介護職員とは、介護福祉士あるいは、介護福祉士以外で一定の研修を修了し都道府県知事に認定された介護職員のことを指しています。
そのほか、
③高齢者の住まいの整備など
有料老人ホームに入居した際、90日以内の契約解除の場合、前払金を入居者に全額返還するという契約をホーム側は結ぶことになります。これにより、実費相当額を除いた、残りの費用については全額が返還されることになります。
また、介護療養型医療施設(病状が安定した状態で医療・療養を必要とする人が入院)が今年3月に廃止予定でしたが、6年間先送りされました。
④認知症対策の推進
認知症を発症した、あるいは1人暮らしの高齢者が増えていき、成年後見制度の必要性は高まってきています。そこで、弁護士などの専門職以外の市民後見人を 中心に制度を考える必要があります。市民後見人を育成・推進する市町村は全国に多くあり、愛知県内では豊川市や高浜市で始まっています。
⑤保険者による主体的な取り組みの推進
⑥保険料の上昇の緩和
65歳以上の方から徴収する介護保険料について、平成23年以前の介護保険料と比べて大幅に上昇しないように、財政安定化基金や介護保険給付費等準備基金を取り崩して、保険料の軽減につなげています。
また、本人と世帯員の市民税の課税状況等による所得段階区分を8段階から11段階に増やし、より細かく介護保険料の算出ができるようになっています。
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小規模多機能型居宅介護
デイサービスを中心として、利用者の様態や希望に応じて、随時訪問介護、ショートステイを組み合わせたサービスを提供する。利用者が中重度の要介護者に なった場合でも、在宅での生活が続けられるように支援するものです。小規模多機能型居宅介護を受けることで、デイサービスや訪問介護、ショートステイと いった一連のサービスに連続性のあるケアを期待できるというメリットがあります。同時に、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、福祉器具 貸与などを利用できます。
権利擁護
高齢者の持つ権利を守ること。虐待を防止することと成年後見制度が柱になっています。
虐待防止については、ケアマネージャーらが、高齢者の家族に対して、適切な介護サービスの利用をすすめたり、情報提供を行うといったサポートを行います。 成年後見制度は、後見人が高齢者本人に代わって財産を管理します。さらに、入院手続きや介護保険サービスの利用手続きなども代行します。