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子宮体がんのPET診断

子宮体がん

子宮体がんは、総称的に子宮がんと言われたりしますが、子宮がんは子宮頸がんと子宮体がんに分けられます。また子宮体がんは、子宮内膜がんとも呼ばれています。以下は子宮体がんと統一します。子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)であると解明され、比較的若年者の方が発症します。近年、子宮頸がんワクチンが開発されたことも話題にもなりました。
子宮体がんの発生には卵胞ホルモン(エストロゲン)という女性ホルモンが関わっています。卵胞ホルモンは、子宮内膜の発育を促す作用があり、卵胞ホルモンの値が高い方では子宮内膜増殖症という前段階を経て子宮体がんが発生します。未出産、肥満、月経不順がある、卵胞ホルモン製剤だけのホルモン療法を受けている方などがこれにあたります。他方、卵胞ホルモンの刺激と関連なく生じるタイプの子宮体がんは、がん関連遺伝子の異常に伴って発生し、高齢者に多くみられます。
子宮頸がんが20歳代後半から30歳代後半に多いのに対し、子宮体がんは50歳代〜60歳代に多いがんです。また近年は、年齢に関係なく子宮体がんは増加傾向にあります。
子宮体がんの自覚症状は、不正出血です。子宮頸がんに比べ、子宮体がんになる方は比較的高齢で、閉経後あるいは更年期での不正出血がある時には特に注意が必要です。閉経前であっても、月経不順、乳がん・大腸がんを患ったことがあるなどということがあれば注意が必要です。

 

子宮体がんの検査

一般に子宮がん検診といわれている検診は、子宮頸がんを対象としています。このため子宮体がんを調べることは出来ません。検査を行うときには子宮体がん検査を行うことを告げねばなりません。これらの検査は、粘膜面の細胞を採取して検査します。子宮体部は子宮頸部の奥にあり、器具をより奥に入れ採取するため痛みを伴うことが多く、しばらく出血も続くことがあります。
この検査でがん細胞が見つかると、US、CT、MRI検査などでがんの広がりや、転移を調べます。
最近はPET検査の有効性が理解され、大変よく用いられています。

 

PETによる子宮がん検査

① 健診としてのPET検査
当院においては、早期がん発見のためのPET検査を用いた健診を行っています。紹介するのは、この健診によって早期の子宮体がんが見つかった例です。
図1はPET画像を重ね合わせたMIP画像、図2は、CT画像にPET画像を重ねたFusion画像です。2007年には子宮内に集積はありませんでした。しかし2010年には子宮体部によく見ても見逃す淡い集積()があります。子宮内膜は健康な方でも集積がある方も多く、一年様子を見ることになり、2011年に再度検査を行ったところ、同部位に強い集積が見られ、細胞診でがんが確認されて手術をしました。がんは極小さなもので、その後再発等はありません。

図1、2

② 術前検査としてのPET検査
組織診にて子宮体がんと診断され、術前に転移の有無を調べるために、CT・MRIなどで検査を行ったところ、左腎臓の横に腫瘍らしきものがあり(図4:黄色→)転移を疑われた方です。PET検査では、子宮体がんの部分に集積(図3、4:赤→)を認めますが、その他のところには、集積はありません。転移を疑われた腫瘍は、転移ではなく良性でした。
この方はPET検査を行った結果、子宮だけの切除で治療は完了しました。もしPETを行わなければ、他の部分も切除したり、余分な治療を追加しなければなりませんでした。

図3、4

③再発診断としてのPET検査
子宮体がんにて、手術をされ経過観察されていた方です。術後1年後のCT検査で、膵臓と肺に転移を疑う所見がありPET検査を受けることになりました。
その結果が図5の1年後のPET画像です。赤矢印で示したa,b,cに集積を認めますが、これらは全てリンパ節転移でした。疑われた膵臓、肺には転移は見られません。
この方はその後抗癌剤治療を行い、術後1年3ヵ月後にはcのリンパ節転移は消失し、a,bのリンパ節転移も集積は低下しています。
術後2年目の画像では、集積は全て消失し良好な経過をしていることがわかります。

図5

PETによる子宮体がんの検査

子宮体がんは、子宮頸がんのようなワクチンはなく、比較的高齢の方が多いがんです。しかもがん発生の原因も種々あり防ぐことの困難ながんでもあります。しかし、どのようながんでも同じですが、早期発見すれば治らないがんはありません。PET検査は早期発見のために、大変役に立つ検査です。
また不幸にして子宮体がんが見つかった場合は、治療をお受けになる前にPET検査を行うことをお勧めします。PET検査によって転移の状態が正確につかめ、治療方針の決定に役に立つからです。他の部位に転移があっても、子宮だけをとる手術では何の意味もない治療になってしまいます。②のようなケースでは余分な治療はしなくてすみます。
治療後の経過観察においてもPET検査は役に立ちます。CT、MRIなどの検査を行っても、形態的評価でしかないので、正しい転移・再発を知ることは、時に困難となります。PETは機能評価となるために、そこにがんが転移したり、再発した場合には正確に見つけることが出来ます。

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