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目標は「自分らしい豊かな人生を送ること」―ピンピンコロリを目指して、キーワードは「肥満解消・運動習慣・禁煙」―

医療法人社団福祉会 高須病院 看護部 副看護部長
 糖尿病看護認定看護師 日本糖尿病療養指導士
 兵頭裕美

「ピンピンコロリ」を目指そう!

前回のワライフ夏号では、糖尿病とはどんな病気か、また実は糖尿病治療=健康生活なんです、というお話をしました。
糖尿病の療養生活のご相談をお聴きしていると、ときどき「わたしは好きなものを食べて好きなように暮らしてコロリと逝きたい」と言われる方がみえます。そういったときには「もちろん、私もそう思っています!」とお話しします。ただ、好きなものを食べて好きなように暮らすためには元気でいなければなりません。つまり、コロリと逝く前には“元気に暮らして”ということが前提になっています。「ピンピンコロリ」、年をとってもピンピン生きて最期はコロリと死ぬことが理想ということになります。

図1

ピンピン元気に暮らしていられる期間の寿命を“健康寿命”といいます。この健康寿命と関連しているのが「肥満・運動・喫煙」です。太っていて運動不足でたばこを吸う人と、太っていなくて運動をしていてたばこを吸わない人では、健康寿命が10年以上違うそうです(図1)。
元気に長生きしてポックリ逝く方もいれば、理想通りピンピンコロリとは逝けない方もみえます。病院での延命ではなく健康寿命を延ばして、自分らしい豊かな人生を長生きしたいと思いませんか?
今回は、この健康寿命を延ばすためのちょっとしたコツをお伝えしたいと思います。

 

「肥満」内臓脂肪に要注意!

最近の研究で脂肪細胞が大きくなるといろいろなサイトカインやホルモンを分泌することがわかってきました。あわせて、これらの悪玉物質が血圧を上昇させたり、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くしたり、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる血栓を作りやすくしたりといった作用があることもわかっています。つまり、内臓脂肪は糖尿病・脂質異常症・高血圧症といった生活習慣病に深くかかわっていることが明らかになってきました。内臓脂肪の蓄積とこれらの生活習慣病を合併した状態がメタボリックシンドロームです。生活習慣病は単独でも動脈硬化を促進し、健康な人に比べて脳卒中や心筋梗塞などのリスクを2~3倍増加させます。さらにお互いに合併しやすく、2つ合併するとそのリスクは6倍、3~4つ合併すると35倍にもなります。ピンピン元気に暮らすために、そのようなリスクは少しでも低く抑えたいところです。
内臓脂肪と関連する食生活として図2の項目が挙げられます。この項目のうち、いくつあてはまりますか?いずれも内臓脂肪を蓄積させてしまう食習慣になります。いきなり全部を改善するのは、難しいものです。そこで、どれかひとつからでも改善できそうか考えてみてください。

image002図2

 

「運動」運動習慣があると病気になりにくい!

一週間当たりの運動量が多い人ほど、糖尿病・心筋梗塞・脳卒中になるリスクが低下することが明らかになっています。そうはいっても、「なかなか運動する時間がとれない」、「運動は疲れる」、「運動は苦手」など、〝運動〟といわれると実践することが難しそうに感じてしまいます。
そんな方への運動へのハードルを下げるお話を紹介しましょう。歩く習慣はなかなか身につかないものです。心筋梗塞を起こした約400名の患者さんの追跡調査があるのですが、1年後の死亡率を見ると、犬を飼っている人は飼っていない人に比べると死亡率が7分の1となっています。犬を飼っている人は、犬と一緒に散歩をするという生活習慣があることが要因となっていると考えられます。なぜ、犬を飼っていると歩く気持ちになるのでしょうか?おそらく犬が「散歩に連れてってワン!」と吠えるからなのかもしれません。これが「散歩(運動)しよう」という刺激になっているのです。要はきっかけづくりです。犬でなくても、一緒に歩いてくれる仲間(家族や友人)をつくることがきっかけと継続につながります。ほかにも、玄関にウォーキングシューズを置く、ふだんから動きやすい服装にする、外出する用事をつくるなど、工夫次第で小さなきっかけは作れそうです。ほかにも、通勤通学、家事全般、何から何まで人の暮らしは身体活動の集合体です。少しの時間でも体を動かせば運動効果はあります。暮らしのほとんどは運動療法にできるのです。

 

「喫煙」喫煙者は長生きできない!

喫煙は肺がんなどの悪性腫瘍以外に血圧の上昇や動脈硬化の進行に関連しています。また、最近では、血糖値の上昇やインスリンの効きを悪くする作用もあり、糖尿病発症のリスクを高めることがわかってきました。さらに喫煙を続けることで寿命は10年短くなります。

image003図3喫煙が生存率に与える影響

 

 

 

 

 

 

 

禁煙外来でお話をうかがっていると、たばこは体に悪いと知ってはいても、やめられない・やめない方にはそれぞれに理由があることがわかります。やめられないのは意思が弱いからではなく、ニコチン依存状態になっているからかもしれません。
禁煙のメリット(図4)・デメリットを知る、実感する、禁煙治療する、禁煙補助薬を使用するなど、禁煙のきっかけと道のりは人それぞれです。我慢できなくて1本吸ってしまったときに「やっぱり無理だ」とあきらめてしまうのではなく、またそこから仕切りなおすつもりで再度チャレンジすれば達成できるかもしれません。まわりの禁煙成功者の話をきいてみるのもいいかもしれません。運動と同じく、仲間(協力者)を見つけることもきっかけのひとつとなり、継続につながると思います。ちょっとやってみようかなと思いたったら、ひとりひとりに合った禁煙方法を一緒に考えてくれる「禁煙外来」を活用するのも一方法です。

image004図4禁煙メリット:禁煙するとこれだけ貯金できる!

 

 

 

 

 

 

 

自分らしい豊かな人生のために、 今できることを見つけよう!

4つの生活習慣「①適度に運動する習慣がある、②野菜と果物をたっぷりとる、③喫煙習慣がない、④飲酒は適度におさえる」がある人は、ない人に比べて約14年長生きするという研究報告もあります。日々のほんのちょっとしたことが、健康に過ごすこと、ひいては自分らしい豊かな人生につながっています。あなたも自分にできることを見つけて、まずはひとつ、始めてみましょう。始めるのは「今!」ですよ。

 

 


引用・参考文献・URL:
①坂根直樹著:「Dr.坂根のやる気がわいてくる糖尿病ケア」:第1版:医歯薬出版株式会社:2009
②稲垣暢也監修:「モチベーションUP!糖尿病教室」:第1版:南山堂:2013
③http://sugu-kinen.jp/:「すぐ禁煙.jp」:(株)ファイザー

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