糖尿病と歯周病の深い関係
医療法人社団福祉会 高須病院 看護部 副看護部長
糖尿病看護認定看護師 日本糖尿病療養指導士
兵頭裕美
糖尿病は合併症の病気であるとも言われています。3大合併症については「し・め・じ」と覚えている方もみえると思います。「し」が神経障害、「め」が網膜症、「じ」が腎症のことで、典型的にはこの順番通りに発症していきます。5大合併症というと、これに追加して「え・の・き」で覚えることができます。「え」が壊疽など糖尿病足病変、「の」「き」が脳梗塞、心筋梗塞など動脈硬化性疾患のことです。ところがさらに6番目の合併症として、「歯周病」が知られるようになってきました。
糖尿病と歯周病はともに代表的な生活習慣病です。糖尿病の人は歯周病になりやすく、また反対に歯周病が糖尿病や動脈硬化を悪化させることが分かってきたのです。
歯周病ってどんな病気?
歯周病とは、プラーク(歯垢)が主な原因となり、歯を支える組織が炎症を起こす病気です。プラークとは「細菌のかたまり」で、放置しておくと歯を支えている骨を破壊し、歯を失うことにもなります。
歯周病の進行には、遺伝因子や環境因子などに加えて、からだの抵抗力が大きく関係します。糖尿病の高血糖状態によりからだの抵抗性が弱くなると、歯周病の発症・進行に影響を与えるのはそのためです。他の感染症と同様、発症・悪化しやすく治りにくい状態になってしまいます。
歯周病が及ぼす糖尿病への影響
歯周病関連細菌から出される毒素が歯肉から血管内に入り込み、その結果産生される腫瘍壊死因子(TNF-α)という物質が産生されます。この物質が、血糖値を下げる働きをもつインスリンをつくりにくくすることが分かっています。
慢性炎症である歯周炎の存在により血糖値は上昇し、糖尿病のコントロールをますます難しくして、同時に歯周病も進行していくという悪循環に陥ってしまいます。
歯周病治療による糖尿病への影響
慢性炎症としての歯周炎が適切な治療により改善すると、糖尿病のコントロール状態をあらわすHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)も改善することが明らかになっています。
対策は・・・
糖尿病と歯周病の深―い関係が分かったところで、では、どのような対策が必要でしょうか?
以前、当院の糖尿病教室でもお話ししましたが、
①セルフチェック、
②歯科受診、
③セルフケア
になります。
セルフケアでは、食べたらこまめに歯を磨く、だらだらと間食をしない、入れ歯はいつも清潔にする、など日頃の生活習慣を見直すことも重要です。また、歯科医、歯科衛生士の指導のもとで正しいブラッシング方法を知る、自分に合ったデンタルフロスやマウスウォッシュを併用して口の中の清潔を保つことも必要です。
もう一つ、とても重要なことは、禁煙することです。たばこを吸う人は吸わない人より歯周病になりやすいことが分かっています。たばこに含まれるニコチンは血流を悪くさせるので、糖尿病治療にも悪影響を及ぼします。以前ご紹介したように、禁煙グッズや禁煙外来を上手に利用してください。
参考文献
①https://www.jnj.co.jp/jjmkk/lifescan 「糖尿病ハンドブック 糖尿病患者さんが心がける歯周病予防」
②日本糖尿病学会 編・著:「糖尿病治療ガイド 2014-2015」,文光堂,2014
③日本糖尿病療養指導士認定機構 編:「糖尿病療養指導ガイドブック2015」,メディカルレビュー社,2015