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食べるものを上手に選んで 血糖コントロールに役立てよう!

医療法人社団福祉会 高須病院 看護部 副看護部長
糖尿病看護認定看護師 日本糖尿病療養指導士
兵頭裕美

 こんにちは!暑い暑い夏がやってきますね。暑い時期は食欲が落ちてしまいがちです。そこで、ついついさっぱりしたものや冷たいものばかりを食べてしまうと、血糖コントロールが乱れがちになる季節でもあります。今回は、血糖値に大きな影響を与える、食品の炭水化物について説明します。

炭水化物と血糖値

 食事療法の実践には、体に必要な栄養素を過不足なく摂取するために、食品に含まれる栄養素やエネルギーの量を知っておく必要があります。体内でエネルギー源となる栄養素は、炭水化物、たんぱく質、脂質の3つです。炭水化物は「糖質」と「食物繊維」を合わせたもので、糖質は血糖上昇や維持に利用されますが、食物繊維は消化されずエネルギーになりません。2型糖尿病患者さんではインスリンの初期分泌が低下しているため、糖質を多く含むごはんやパンなどの過剰摂取は食後高血糖になります。食後の血糖上昇は炭水化物の量や質で決まります。食後高血糖の改善には、食品のエネルギーではなく炭水化物の量を調整したり、血糖値を上げにくい食物繊維を多く含む野菜やきのこ、海藻などを合わせて摂取したりすることが効果的です。

炭水化物の適正な摂取量

 糖尿病の食事療法では、指示エネルギー内で炭水化物のエネルギー割合を50~60%程度にします。『糖尿病食事療法のための食品交換表(第7版)』では、現代日本人の食生活を考慮し、炭水化物エネルギー比率の下限が従来の55%から50%に引き下げられています。1日の指示単位(指示エネルギー量)の配分例として、糖質の量を考慮した3段階のパターンが紹介されています。炭水化物60%(糖質相当量55%)、炭水化物55%(糖質相当量50%)、炭水化物50%(糖質相当量45%)です。食習慣や身体状況、目標の血糖値に合わせて、指示エネルギー内で主食となるごはんやパンの量を管理栄養士や医師と個別に相談して決めます。たとえば、1食600Kcalで炭水化物50%のごはんの量は150~180gが目安です。栄養バランスを考え、個別に対応して、継続できる計画を一緒に立てましょう。

炭水化物制限の注意

 糖尿病の食事療法では、生活活動量を考慮したエネルギー量を守り、栄養バランスを考え、朝・昼・晩と規則正しく食べ、間食を控えることが基本です。炭水化物を制限すると代わりに脂肪がエネルギー源として使われます。これにより減量効果は期待できますが、エネルギー源として筋肉が使用されると体力低下を招くことになります。とくに高齢患者さんでは、極端な炭水化物制限による筋力低下に注意しなければなりません。日本糖尿病学会では「総エネルギー摂取量を制限せずに炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない」と提言しています。

カーボカウント法とは

 カーボカウントを活用して食後の血糖管理ができます。カーボカウントはcarbohydrate countingの略で、炭水化物の制限を厳しくするのではなく、「食事中の炭水化物量を計算して食後の血糖値を管理すること」を目的とした食事療法のひとつです。「基礎カーボカウント」と「応用カーボカウント」の2つの方法があります。一般的に、2型糖尿病患者さんが行うのは基礎カーボカウントです。これは1日の指示エネルギー内で摂取する炭水化物量を一定にし、食事ごとに摂取する炭水化物量を等分にすることで、血糖値の上昇を一定にして血糖コントロールを行う方法です。応用カーボカウントは強化インスリン療法を行っている人が対象で、食事の炭水化物量に合わせてインスリン量を調整します。どちらにしても、カーボカウントの実践には、食品に含まれる炭水化物量を覚えることが必要です。

GI値と地中海食とは

 血糖値を上げやすい食品と上げにくい食品を示しました(図1)。
高須様記事no28_01
「GI値」からも血糖値の上がりにくい食品を知ることができます。その食品が体内で糖に変わり血糖値が上昇するまでのスピードを図ったものがGI値(グリセミック・インデックス)です。エネルギー(カロリー)の高い食品が血糖値を上昇させるのではなく、炭水化物の量で決まります。そして、同じ量の炭水化物を含む食品でも、血糖値が急激に上昇するものと穏やかに上昇するものがあります。GI値は、ブドウ糖を摂取した時の血糖値上昇率を100とし、相対的に表されます(図2)。
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そのGI値が低ければ血糖値の上昇が遅くなり、インスリンの分泌も抑えられます。米や麦などは精白されていないもののほうが、食物繊維やミネラルが残っているため、GI値が低くなります。最近話題の「地中海食(図3)」もGI値と関係しています。

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地中海食はオリーブオイルや野菜、全粒穀物、魚を重視する食事で、糖尿病の発症リスクが低下されると報告されています。主食のパスタも全粒穀物で、GI値の低い食品です。

 暑いからと言って、さっぱりとしたそうめんだけで食事を済ませてしまうことはありませんか?口当たりがよく低カロリーのように思われがちですが、そうめんのみの食事では炭水化物の割合が多くなり、食後急激に血糖値をあげてしまう可能性が高いことがお分かりいただけたと思います。食品を選ぶ際には、カロリーのみでなく炭水化物量やGI値も参考にしてください。

参考文献
『糖尿病ケア』2016 vol.13 No.6:メディカ出版
『糖尿病食事療法のための食品交換表(第7版)』:日本糖尿病学会

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