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親の介護 アルツハイマーの母から学んだこと その十二

親の介護 アルツハイマーの母から学んだこと その十二

滞在時間24時間 緊張の一時帰宅

母が入院してからも数年は正月、お盆、お祭りなど年4回程度、外泊許可をもらい一泊だけでしたが一時帰宅をしていました。できる限りいろいろなことを覚えておいてほしい、少しでも楽しい思いをしてほしいという気持ちでした。まだ歩行もでき食事も自立していたので可能でした。しかし身の回りのことは一定できても実際は大変なことばかりで、家での滞在時間は実質24時間程度ですが私にとっては常に緊張感が続きました。

「家はどこだったかね?」

入院して1年くらいして一時帰宅した際には、車を降り「家はどこだったかね?」と隣の家の方向に歩きはじめ慌てて連れ戻すことがありました。さらに家の中に入っても間取りを忘れ、トイレも風呂も自分の部屋もチンプンカンプンな状態でした。まだ歩くのは達者でしたのでどこに行ってしまうか心配で目を離すことができず、いつも一緒に居ることになりました。

食べ物の嗜好、食べる量も別人のように

食欲も豊富で特に昔から甘いものが好きだったので、和菓子などを出すと喜んで食べてくれました。しかしアルツハイマーの症状がすすみ3年、4年と過ぎた頃にはそれまでになかったことがおこりました。以前は海産物の生ものは嫌いで手をつけることはほとんどなかったのですが、食卓にあった刺身を貪りつくように食べ始めたのです。お正月のおせち料理で母は「これは食べないだろう」と思っていたものにどんどん手を出し、共有のお皿にあるものも食べ尽くしてしまいます。さらに食べる量も異常に多く以前とはまったく別人のようでした。よく認知症の人が食事をしたことを覚えていない話はよく聞きますが、母の場合、味覚などの嗜好、さらに満腹という感覚さえも麻痺してしまっているのではないかと思いました。

覚えている子や孫の名

趣味もほとんどなく楽しみは子どもや孫の成長くらいの母でしたが、甘いものを食べたり唄を歌ったりするのが好きでした。しかしもう美味しいと感じる機能さえも失われてきているんだと切ない思いがしました。それでもこの時はまだ私や孫たちの名前は覚えていてくれました。

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