シニアの知って「得」する国の制度 第23回
繰上げ受給の老齢基礎年金
国民年金である老齢基礎年金は、生年月日に関係なく65歳から受給開始となっています。しかし、最大で30%減額されますが、希望すれば60歳から前倒して受給可能です。この「繰上げ」には多くの落とし穴があり、たとえば障害年金がもらえなくなるというものがありますが、障害を負わなければデメリットではではありません。
今回はこのようなデメリットではなく、前回と前々回の「加給年金額」と「振替加算」に関しての豆知識です。
妻が65歳になると加給年金額が打ち切られる
加給年金額は年間390,100円/年(平成28年度価額)ですが、妻が65歳になると夫の年金から加給年金額分が減額される結果となります。つまり、約40万円少なくなります。本来加給年金額は扶養手当に相当するもので、手当が打ち切られて正規の年金に「戻る」と言うほうが正しいのですが、結果的には減らされるということです。
妻が冒頭に述べた「繰上げ」をしない場合、妻本人の老齢基礎年金が出始めるのと引き換えに、ご主人の扶養手当が終了するという理屈です。
夫婦合計の年金額を考える
妻が「繰上げ」していない場合。
仮に、妻の老齢基礎年金が60万円であるとします。妻が65歳になったときに
『①夫の年金は▲40万円』
『②妻の年金は+60万円』
『③妻の年金に振替加算が約45,000円』
となります。
①~③の総計は+245,000円となります。
ここでのポイントは、②の+60万円があることです。これがあるために、妻が65歳になると夫婦合計がプラスになります。
「65歳から増える」か、「65歳から減る」か
妻が「繰上げ」している場合。
妻が65歳になると同時に、夫婦の年金合計額が減ってしまいます。
妻はすでに老齢基礎年金を受給していますので、先ほどの計算をしてみると『①夫の年金は▲40万円』『③妻の年金に振替加算が約45,000円』となり、ということは、妻64歳時の夫婦合計から「30万円以上減る」ということになります。
65歳から減る。年齢的に、パート等で働いて給料で稼ぐことが難しくなる時期。そこで年金収入が減ると、生活がさらに厳しくなってしまう可能性もあります。
繰上げ受給は、早くからまとまった収入になるので魅力的ですが、「65歳から減る」という現実を踏まえ、慎重に検討して決めるようにしなければ後悔することもあります。「繰上げは取り消しができない」ので、社会保険労務士や年金事務所に納得するまで相談してみてください。
さて、次回は年金を受給しながら厚生年金をかけているとき、払った(天引きされた)保険料はいつ反映して年金額が増額するかのお話です。年金をもらえる年齢で働いている方は是非ご覧ください。
有限会社CSプランニング