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ワライフ認知症講座 第19回 タイプ別でみる徘徊

徘徊を理解する

「徘徊」、その原因はさまざま

 社会問題にもなっている徘徊とはどのようなもので、それをどう理解すればよいのかを考えてみたいと思います。

 一般的に周知されている徘徊では、アルツハイマー型認知症のメカニズムが代表的で、地誌的見当識障害(※建物・風景を識別できなくなり、道に迷う。また、自分のいる場所や目印の建物などは識別できるが、目的地との位置関係が分からず進むべき方向を見失う)の症状が出現することで徘徊や迷子という状況になるのです。

アルツハイマー型認知症だけではない徘徊

 しかし、徘徊や迷子といった症状はアルツハイマー型認知症だけではありません。脳血管性認知症では、夜間、せん妄(※軽度から中等度の意識障害が基底にあり、その程度が著しく変化し、その際に不安が強まったり、あるいは錯覚や幻覚を伴い、異常な行動や言動、興奮などがみられる状態のこと)による徘徊が起こりやすく、レビー小体型認知症では、徘徊とは違ったメカニズムで、意識障害(せん妄や幻視)などの症状で家の中を歩き回るなどの行動が現れます。もちろん見守りなどがなければ屋外へ出てしまい徘徊となってしまいます。

 これらの認知症(アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症)の方のケアは特に注意が必要となります。

 

20㎞もの距離を歩くことも アルツハイマー型認知症

 アルツハイマー型認知症の方の身体機能は比較的良く、筆者の経験した実例では20㎞もの距離を歩き、発見に2日間の時間を要したこともありました。そのため介護をする家族は常に見守らなければならず、安全面に対する不安も抱えているのです。

 

意識障害で交通事故のリスクも高い レビー小体型認知症

 レビー小体型認知症の方の事故も増えています。意識障害(せん妄や幻視)が出現すると安全面を考慮することができず、交通事故などのリスクも高くなるのです。

 

一日に何度も同じ道やコースを規則的に歩き回る「周徊」 ピック病

 前頭側頭葉変性症の一つである前頭側頭型認知症≒ピック病でも注意が必要です。アルツハイマー型認知症などでは初期でも迷子になりやすいことが特徴ですが、ピック病の場合は迷子になりにくいという特徴があります。ピック病では見当識障害などの症状は出現しないため道に迷うことは少ないと言われています。特徴的な行動として、常同行動や強迫行動が出現します。その中の代表的なものに「周徊」という特徴があります。一日に何度も同じ道やコースを規則的に歩き回りますが、アルツハイマー型認知症とは異なり道に迷うことはほとんどありません。注意点としては、脱抑制により行動を止めることが自分ではできなくなり、雨の日や雪の日でも時刻表的生活(※ピック病の初期症状で、時刻表のように決まった時間に決まった行動を繰り返し、周囲の助言を聞き入れない)を繰り返してしまいます。また、信号無視などの交通ルールを無視する行動があるため交通事故などにも注意が必要です。

※認知症のタイプについては、WEBワライフ「ワライフ認知症講座第10回」を参考にしてください。

 

徘徊の対処法

向かい合わねばならない家族、介護職員

 介護・福祉の世界ではそもそもこの「徘徊」という言葉に拒否反応をする方が多くいると言われています。徘徊ではなく目的をもって行動しているのだからこのような言葉は適切ではないと考えているからです。

 しかし、実際に介護をしている家族、介護職員は常にこの問題と向き合っているのです。

 各地で行われている研修やセミナーでは、本人の意思で行動しているのだから、見守り、寄り添い、共感してケアを行っていきましょうと言われています。それらが介護の基本であることは誰もが理解しているのですが、残念ながら解決にはなりません。家族、スタッフは疲弊していくでしょうし、不幸な事故などで多額の賠償を求められることも他人ごとではありません。ではどのように対応していく必要があるかを考えていきましょう。

専門医を受信しタイプ別に適切な治療を

①認知症と診断されてなく治療を受けていない場合は、専門医への受診を行い、どのタイプの認知症かを見極め、適切な治療を受けましょう。その後、介護保険サービスを利用していきます。365日24時間は見守ることはできませんが、各種サービスを利用すれば家族の休息が確保でき、在宅での安全な生活を送ることができます。

 タイプ別とは、アルツハイマー型認知症であれば、落ち着きがない、興奮することがよくあるなどの症状があれば、それらは徘徊を誘因するので、抑制系薬剤などを適切に処方してもらうことで予防することが期待できると言われています。

 レビー小体型認知症では、意識障害から出現する歩き回りに対して、覚醒させる治療が必要になります。

 脳血管性認知症は夜間せん妄が起こりやすいので症状を医師へ正確に伝え、治療を行っていく必要があります。

 

抗認知症薬の副作用の可能性も

②既に認知症の診断を受け治療を開始している方は、抗認知症薬の副作用ではないかと確認する必要があります。

 アルツハイマー型認知症は初期、中期、後期に分けることができます。初期から中期にかけてイライラや怒りっぽさが出現してくることがあります。その時に興奮系薬剤である抗認知症薬の量が過剰であれば、より興奮させてしまい、徘徊を誘因させてしまいます。

 レビー小体型認知症は、もともとパーキンソン症状を伴う疾患なので、パーキンソン治療薬の処方を受けていることが多くあります。パーキンソン治療薬が過剰であれば副作用として幻視が多くなるので、徘徊を誘因してしまいます。

 ピック病の徘徊で多く報告されている原因として、抗認知症薬の副作用があります。多くのピック病の方はアルツハイマー型認知症と診断されている現状があり、抗認知症薬が処方されています。その影響で様々な症状が増幅されます。これを副作用による徘徊と呼ぶ医師さえいますので注意が必要です。

 

さまざまある「認知症」を一括りに考えずに

 抗認知症薬を服用してから徘徊が増えたのであれば、副作用を疑うべきなのです。しかし、知識の浅い医師にかかれば、認知症が進行したせいだと言われることもあります。徘徊と一括りに考えずに、タイプ別の特徴、薬剤の副作用などを注意深く観察し、適切な医療を介入させれば介護家族や介護職員の負担軽減になり、また本人の安全を確保することができるでしょう。

 

 

 

 

 

第2回認知症ケアアドバイザー講座

 大阪で第2回認知症ケアアドバイザー講座が開催されました。今回は近畿エリアでの開催で、大阪、京都、滋賀、奈良、兵庫、和歌山から多くの受講生が参加されました。

「タイプ別の見極め、薬剤の副作用を理解できた」

 アンケートでは、前回と同様に認知症=アルツハイマー型認知症という認識の方が多くいましたが、受講後にはタイプ別の見極め、薬剤の副作用をしっかり理解することができたとの感想をいただきました。認知症の方を守るのは家族や介護スタッフであるとの意識を持つことができたのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一般社団法人認知症ケアアドバイザー協会

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