外見上はわからない場合でも、障害によって困っている人がいます!②「基本の応対その1~コミュニケーション~」編
「外見上はわからない場合でも、障害によって困っている人がいます①」では、障害についての説明をしました。今回も国土交通省の「発達障害、知的障害、精神障害のある方とのコミュニケーションハンドブック」から「基本の対応」についてご紹介します。
困っている人がいることに気づいてください!
こんな人に出会ったことはありますか?
- ●急に奇声をあげたり、走り回ったりしている人がいます。
- ●隣にいる人のものを触ってしまって、トラブルになってしまってい る人がいます。
- ●困っていることを説明できず、また自分から声をかけられないためにモジモジしたり、ウロウロしている人がいます。
- ●フラフラしたり、ぼんやりしたりして、人にぶつかってしまっている人がいます。
- ●身体が動いていたり、声や言葉が急に出たりする人がいます。
- ●パニックになって、大声をあげてしまったり、走り回ってしまったりする人がいます。
自分ではコントロールできず、 身体を動かしています
発達障害、知的障害の方には、自分ではコントロールできない動きや 声がある人がいて、奇異な目で見られてつらい思いをしています。 例えば、トゥレット症候群は、「チック」として知られていますが、 首振り、まばたき、ねじり等の多彩な動きを繰り返す運動チックや咳払い、叫び声、不謹慎な言葉を発する等の音声チックの症状があります。
困っていることを自分で説明できずに手助けを必要としています
わからないこと、理解できないことなどに直面して困ってい ても、困っていることを説明で きないために、そのままモジモ ジしたり、ウロウロしたりして いる場合があります。手助けが必要な困りごとを抱えている場 合もあります。
こんな事で困っています
公共交通機関、公共施設、商業施設などの建築物、公園や駐車場などで、上記のような人がいたら、実はこんな事で困っているのかもしれません。参考にしてください。
行くべきところがわからない
- ○案内サインが見つからず、どこへ行けばよいかわからない。
- ○表示が漢字だけだと読めない 。
- ○情報が多すぎてわからない 。
- ○長く物事を覚えていることができないため、目的の場所を探せない。
- ○目的の場所までの行き方が複雑なため、わからない。
- ○初めての場所で迷ってしまう。
- ○自分が行きたいところとは違う場所を、『行きたい場所だ』 と言ってしまったり、行きたくないのに行きたいと言ってしまう。
自分から上手く話せない
- ○自分から声をかけることができない。
- ○行き先を上手く伝えられない。
- ○初対面の人に話をすることに慣れていないため、緊張してしまう。
- ○緊張して、混乱してしまうために話せない。
- ○どもってしまうため、話すことをためらっている。
話や回答がうまくできない
- ○話がうまくまとまらない。
- ○言葉がうまく出ない。
- ○緊張して話ができない。
- ○思っていることをうまく伝えられない。
- ○言葉、用語、表現などがあいまい。
- ○話している言葉が思っていることと違うことがある。
- ○返答していてもわかっているとは限らない。
- ○音声言語によるコミュニケーションがとれない。
- ○幻覚や妄想と思われる話をする。
話や説明が理解できない
- ○一度にたくさんのことを言われるとわからなくなってしまう。
- ○複雑な会話や文章はわかりづらく、理解に時間がかかる。
- ○言ったことを反復する「オウム返し」の行動をとる人もいる。
- ○質問の内容が十分にわからなくても何となく答えてしまう。
- ○伝わっていないのに相づちをうってしまう。
記憶することが難しい
- ○口頭の説明だけでは忘れてしまう。
- ○聞いたことを全て覚えることができない。
- ○周囲のことに気を取られ、今何を聞いていたのかを忘れてしまう。
気づいたら「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」
発達障害、知的障害、精神障害のある人に見られる代表的なケースと、 その場合の応対について説明します。なお、その症状や反応は多様であるので、ここに掲げたケース を参考にしつつも、それにとらわれない柔軟な応対が求められますが、応対の基本として、「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」をあげることができます。また、このような応対は、子どもや高齢者、外国人など、すべての方に対して活用可能と言えます。
基本の応対~コミュニケーション~「話しかける」「聞く」「説明する」
①話しかけるとき
障害によって様々な 困っている状況があります!
- ●困っていても、自分から声をかけることができないでいる人
- ●状況を説明できないために、どうして良いかわからず、その場で動けない人
- ●声をかけることができず、モジモジしたり、ウロウロしたり、その場で動けなかったり、独り言を言ったりする人
- ●状況が判断できないため、混乱して、ウロウロする人
ポイント「まず、笑顔でゆっくり、やさしい口調で声をかけます」
- ●ゆっくり、やさしい 口調で声をかける。
- ●状況によっては「切符を買うのですか?」など具体的に。
- ●強い口調や相手をと がめるような口調は しない。
- ●後ろから声をかけて びっくりさせない (パニックになって しまう人もいる)。
- ●やさしい表情で、目線を 合わせて声をかける。
ポイント「声をかけたら、様子を見て応対します」
- ●様子を見て、その人の状況に応じた応対をします。
- ●顔色、けがなどについても注意して様子を見ます。
- ●年齢にふさわしい、相手を尊重した応対が必要です。
- ●声かけを断ることもありますが、その場合は声かけをやめます。
②話を聞くとき
感覚過敏の人など、正面に立つと怖いと感じる方がいます!~おどろかせない目線の合わせ方~
- ●斜め前に立ちます。
- ●笑顔で、目を合わせます。
- ●近すぎず、声が聞こえる距離を保ちます。
- ●人の目線が怖い人もいるので、目線を合わせすぎないようにします。
ポイント「リラックスした雰囲気をつくり、相手の様子にあわせて、話をよく聞きます」
- ●安心して話ができるよう、リ ラックスした雰囲気をつくる。
- ●話しかけられやすいよ う、笑顔で応対する。
- ●相手のペースに合わせ て、時間がかかっても ゆっくり応対する。
- ●断片的な言葉からでも相手の状況や気持ち を察して理解するよう努める。
ポイント「必要に応じて、質問により相手の気持ちを確認します」
- ●言葉が出ずに困っている様子のときには、相手の状況や気持 ちを推測して、こちらから質問をし、気持ちを確認します。この場合、「はい」「いいえ」で答えられるように質問します。
ポイント「返答に困っていたら、 補助ツールを使ってみましょう」
- ●自分の気持ちを言葉にできない人には、絵記号などを用いた「コミュニケーションボード」や 筆談器を使うとやりとりができる人もいます。(※コミュニケーションボードの使い方がわからなかったり、慣れていない 人もいます。)
※コミュニケーションボードとは…
知的障害者や自閉症の人など、自分の気持ちを言葉にできない、言葉が理解できない人もいます。 そういった方でも、絵記号や写真等を用いて、自分の意思を指差すだけで伝えることができます。
コミュニケーションボードは、様々な自治体や商業施設などに導入されています。場面に応じて いくつかのパターン(鉄道駅用、お店用など)が準備されています。
ただし、すべての人が利用できるとは限らないため、配慮が必要です。
コミュニケーションボードの一例
WEBワライフ「外見上はわからない場合でも、障害によって困っている人がいます!④コミュニケーションツール編」
③話や説明をするとき
ポイント「ゆっくり、はっきり、短く、具体的に話し、 内容を理解しているか確認します」
- ●ポイントを絞って 、 ゆっくり、はっきり、 短く、具体的に話す。
- ●抽象的な表現ではなく 「あと5分」「黄色の柱」 など具体的な言葉で話す。
- ●メモを使うなど視覚的 に伝える工夫をする。
- ●内容は繰り返し確認 し、本人にも復唱して もらうことも必要です。
- ※たくさんのことを一度に言 われるとわからなくなって しまう人がいます。
- ※会話が途切れても、ゆっく りと待って話します。
ポイント「言葉での説明以外の方法により理解を助けます」
- ●一度にたくさんのことが覚えられない人もいるので、大切なことはメモに書いて渡します。
- ●コミュニケーションボードの活用や、絵や図を用いる、実物を見せ るなどの工夫により、理解を助けるようにします。
ポイント「本人を尊重するように話をします」
- ●話す際には子ども扱いせず、年齢に相応しい応対が必要です。
- ●困っている人の顔をよく見て話をします。
- ●確認のために、介助者に話しかける場合もありますが、その場合も本人の意思を尊重するように配慮します。
④その他の配慮すべき事項
- ■ざわざわした所では、聞き取れない人や落ち着かなくなる人もいるので、静かな場所を選んで話をします。
- ■訪問の目的を的確に把握します。「たらい 回し」にしてはいけません。
- ■幻覚や妄想と思われる話をする人に対しては、内容の正否にかかわらず、まず耳を傾けます。
- ■話の内容を頭から否定したり、安易に同意 したりしてはいけません。話を聞き、落ち着く様子が見られたら、「ところで用件は ・・・ですよね」と話題の転換を図ってみます。
出典
国土交通省「発達障害、知的障害、精神障害のある方とのコミュニケーションハンドブック」より
WEBワライフ「外見上はわからない場合でも、障害によって困っている人がいます!①「障害の理解」編」
WEBワライフ「外見上はわからない場合でも、障害によって困っている人がいます!③「基本の応対その2~パニック時の応対と緊急時・異常時の応対~」編」