【医療】大切な家族・医療・教育機関の共通理解や連携協力(平成25年夏号掲載)
大切な家族・医療・教育機関の共通理解や連携協力
■発達障害について
脳の働きのパターンは人それぞれ。それが「個性」として現れます。
発達障害は、バランスの良い発達をしていかないことを意味し、それに伴って日常生活に支障をきたす場合を指します。これは、生まれつき脳の一部の機能に違いがあることが原因しています。
発達障害の子どもは、「障害」という言葉から、「他の子と同じようにはできない」というイメージを抱きがちですが、苦手なこともあれば、他の子よりもはるかにできることもあります。
例えば、LD(学習障害)の子は、字を読んだり、書いたり、計算したりすることが困難です。ADHD(注意欠陥多動性障害)の子どもは、興味のないことに注意し続けたり、行動をコントロールするのが苦手です。
また、自閉症やアスペルガー障害の子は、コミュニケーションをとるのが苦手です。一方で、こだわりが強いことは、時として、目で見たものの記憶や好きなことへの知識に対して、大人以上の力を発揮する「能力」へと変わることがあります。
発達障害は「個性」の延長線上にあるともいえます。その個性の強さのために、家庭や学校での生活、学業や人付き合いに困難を感じる場合、「発達障害」と呼ばれるのです。
発達障害のひとつであるADHDは日本語で「注意欠如・多動性障害」、LDは「学習障害」と訳されています。この「障害」という言葉があるために、誤解を招いています。
「ADHD」は、「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」の「ディスオーダー」という単語を「障害」と訳してしまったことに原因があります。
本来、「ディスオーダー」とは、「日常生活を行う上での多少のハンディを伴う」という意味合いです。極端な問題があるような意味ではないのです。
■発達障害のお子さんを持つご家族について
ただでさえ大変な育児。
さらに子どもに発達障害がある場合、赤ちゃんの時から、寝ない、笑わない、親の言うことを全然聞かない…と、莫大なる苦労を要します。
そこに追い打ちをかけるように、母親が責められる立場になるケースが多いのです。
毎日の育児の苦労と周囲の心ない言動が重なって、母親自身が強いストレスを受け、不眠や自責、気力低下など精神疾患に至る場合があります。
少数派である発達障害の人たちやその家族は、不安やストレスのシャワーを浴び、情緒不安定になることが多いのです。
そのようなストレスの中、家族間に不協和音を生じ、家庭不和や離婚に至るケースもあります。このような事態が起こらないように早期の家族支援が大切です。
また、診断されても、子供との接触時間の短い父親や祖父母は、「発達障害」という診断に納得できません。特に、言葉が出ている子どもや、遅れの程度が軽い場合は、「個人差」や「特性」、はたまた「母親の育て方のせい」ではないかと考えがちです。
それでは、家族間の溝がどんどん深まります。
そのようなときは、一緒に受診することで、家族の理解が進むことがあります。家族内の共通理解や協力はとても大切な問題です。
■本院の役割
本院小児科では、発達障害のお子さんの家族や保育園・小学校の先生とどのように連携していくのかを話し合う時間を大切に考え「面談」を設けています。お互いがバラバラの意識で異なった方向性で本人たちに接していたなら、どんなに頑張ってもいい結果にはつながりません。
家族・医療・教育機関が一環になって、そのお子さんの治療教育(療育)を行っていくのが理想と考えています。
本院でリハビリ(言語訓練・作業訓練)を頑張っているだけで軌道に乗れてしまう器用なお子さんもいれば、逆に想像できないような細かいことにつまずき、そのたびに話し合いを持っているお子さんのケースもあります。
どんなお子さんであれ、大きな可能性を秘めています。
それが開花するかどうかは、適切な療育・環境設定次第です。そのために、より良質なアドバイスが提供できるよう、一小児科医としてこれからも邁進していきたいと考えております。
最後に、いつも初診の親御さんに贈る言葉を…。
どんなお子さんにも、とても広い〝伸びしろ〟があります。それを伸ばすことができるかどうかは、周りの大人の接し方(伸ばし方)で決まるのです。お子さ んがそのお子さんらしく素敵な成長を遂げることができるよう我々と一緒にがんばりましょう。決してよそ見をしてはいけませんよ。同じ方向を向いていてくだ さいね。
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