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【介護】私の場合 (平成25年初夏号掲載)

タイトル

前回春号では、体に問題を抱えながらもたくましく生きる実母を持つ、Aさんの手記を掲載しました。
今回は、実母が認知症を発症したBさんの『私の場合』です。

■その始まり

私の母は現在、グループホームで生活しています。
思い返すと、1番初めに違和感を感じたのは11年前、私が仕事を再開することになった時のことです。当時、幼稚園の年長組だった長男は延長保育を頼むことにしたのですが、
「子どもの迎えはどうするの?お前が行けるの?」
と聞くので、延長保育を頼んだこと、仕事は夕方4時に終わることを話しました。しかし、顔を合わすたびに、同じことを聞き、その上、私の説明を初めて聞い たことのように言うのです。〝もう5回目じゃないの、この話…〟そうは思いつつも、この時『認知症』という言葉は思い浮かんではきませんでした。

■いったいどうしたの?

2番目は5年前、腰痛と疲労のために、年末に1ヵ月ほど入院した時のことです。病状は落ち着いていたので、お正月は私の家で過ごそうということになり、30日に迎えに行くと、荷物がすっかり片づいていていました。驚く私に、
「看護師が今日、退院だと言った」
と言うのです。正月明けに1度病院に戻って、それから退院だと話しても、
「今日、退院だと言った」
と譲りません。看護師さんに相談し、2日に外泊許可を申請することで、なんとか解決しました。
実はこの入院の3ヵ月前から、母はケアハウスに入居したいと言い出していました。

■ケアハウスに入居するんだ

整形外科の先生から、病院の窓口で相談するように言われ、紹介されたケアハウスを見学に行きました。そのケアハウスの管理者はすぐに入居できるような話し振りで、母はすっかりその気になっていました。
私がケアハウス入居には利点もあるけれど、団体生活には違いないから、我慢しなくてはならないことが増えるし、自由がきかなくなること。それよりも、自宅でヘルパーさんの助けを借りて、暮らした方が良いのではと話しても、
「ヘルパーさんって言ったって、他人が家に出入りするのは嫌だ。家の前に『ヘルパー』と書かれた車が止まっていたら、近所の人に笑われる」
母の気持ちは、ケアハウス入居で占められていたのです。母はケアハウスに入居したら、自宅を貸すか売却するかにして、ケアハウスの入居費用を賄おうと考えたようです。
しばらくたっても、初めに見学したケアハウスから、返事がきません。問い合わせをすると、母よりも早急に入居の必要な人が他にいたので…、ということでし た。なんだか肩すかしをくらった気がしました。そこで、別のケアハウスを3ヵ所、見学をし、申し込みました。時を同じくして、自宅の買い手も見つかり、い よいよケアハウスに早く入居しなくてはと思うあまり、私に
「返事がこんだぞ」
「(ケアハウス入居は)どうなっとるだ」
と繰り返していました。あとで知ったことですが、連日、自分が入居したいと思うケアハウスに、
「いつ入居できるのか」
と電話攻勢をかけていたそうです。

■新しい暮らしに移る

平成21年3月、母が待ちに待ったケアハウス入居の知らせが届きました。4月の初めに入居することが決まったので、今度は自宅の片付けと入居の準備に取り掛からなくてはなりません。入居まで1ヵ月ないというのに、
「なにからやったらいいか、分からない」
と言い、母はなにもしません。しまいには、準備ができたら入居すると言い出す始末。〝なに言ってるの、自分が望んだことでしょ?ぐずぐずしていたら、また 入居が延びてしまうのに…〟私は仕事の合間をみて、自宅の片付けを手伝うことにしました。また、入居契約書作成のために、ケアハウスにも付き添って行きま した。
4月6日、引っ越しの日です。私の胸に不安を残しつつ、母のケアハウスでの新しい暮らしがスタートしました。

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▼ケアハウス
ケアハウスとは、60歳以上を対象とし、食事や入浴の提供がある高齢者向け施設だと言えます。身体機能の低下などから、1人暮らしに不安を感じる方に利用してもらうための施設です。
入居の前提としては、入浴や排泄、洗濯など身の回りの世話が自分でできること。集団生活に順応でき、認知症でないことなども挙げられるでしょう。
また、ケアハウスとよく似た施設として軽費老人ホームA型がありますが、こことの違いは、介護が必要となった場合、ケアハウスでならば入居したまま介護 サービスが受けられる点(※要介護認定を受けている場合)にあります。ただ、その分、費用はケアハウスの方が高めのようです。

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