【医療】コーヒーか緑茶か?それが問題だ!(平成25年初夏号掲載)
コーヒーも緑茶も日常生活に密着した嗜好品。「朝は1杯のコーヒーで目覚める」人もいれば「食後の一服に緑茶でまったり」の人も。もちろんTPOに合わせてどちらも嗜(たしな)む人が大半ですが、その効能には意外と知られていない部分も。
コーヒー派、緑茶派どちらにもきっと新しい発見がある、その由来からより効果的な飲み方までを紹介します。
■コーヒーは薬局で買う?
コーヒーを世界で初めて飲み始めたのはアラビア地方の人で、彼らはコーヒーを眠気覚ましの興奮剤、尿の排泄を促す利尿剤として飲んでいました。
日本には江戸時代、出島のオランダ人によって持ち込まれました。明治のころまではアラビア同様、薬として用いられていましたが、その後一般大衆化してくる と薬効成分は注目されなくなりました。しかしその成分が最近再び注目を集め、世界中の機関で研究されるようになってきています。
カップ1杯のコーヒーの成分は約99%が水分。タンパク質や脂質がわずかに含まれていますが、コーヒーから栄養を取ることはできません。では、なにが体に良いのか?それはコーヒーに含まれるカフェインやポリフェノールです。
コーヒーの成分で最もよく知られているのがカフェインです。先に述べた覚醒作用はカフェインの効果によるもので、今でもコーヒーから抽出されたカフェインが主成分の薬が販売されています。
さらにカフェインには「集中力をアップし、計算能力を高める」「運動能力を向上させる」などの研究結果が報告されています。しかし、同時にカフェインを1度に大量に摂ると、血圧を上げ動悸が激しくなるといった副作用もあります。
カ フェインはコーヒーのほかに紅茶や緑茶などにも含まれる成分ですし、常識の範囲内の量で楽しむ分にはなんの問題もありません。よく言われる「カフェイン依 存症」もあくまで精神的なものであり、薬物のような身体依存ではないのでご心配なく。ちなみに適量といわれる量は1日5~6杯。個人差もありますが10杯 以上は飲みすぎだとか。
それと、成長期の子供にはカフェインはよくないので(体にとって刺激が強すぎるのでイライラや不安感をもたらす)、お孫さんには与えないようにしましょう。
■赤ワインだけじゃないポリフェノール
コー ヒーには、クロロゲン酸などのポリフェノールが豊富に含まれています。これがコーヒーの芳醇な香り、琥珀色、ほろ苦さの元になっています。ポリフェノール は植物が作り出す抗酸化物質で、体の中のさび落としをしてくれる(老化やガンの原因となる活性酸素による体の酸性化を防いでくれる)効果があります。
コーヒー1杯(約140cc)には約280mgのポリフェノールが含まれ、これは同量の赤ワインと同程度、お茶の約2倍にあたります。昨今コーヒーを飲む とガンやⅡ型糖尿病、動脈硬化、肝疾患などの予防に有効であるという研究結果が相次いで報告されていますが、これにはポリフェノールが関係しているのでは ないかと言われています。
■日本人なら緑茶でしょ?
お茶は中国が発祥で、遣唐使が往来していた奈良・平安時代に、最澄(さいちょう)、空海(くうかい)、永忠(えいちゅう)などの留学僧が、唐よりお茶の種子を持ち帰ったのが、わが国のお茶の始まりとされています。
各地にさまざまなお茶の製法がありましたが、蒸製のてん茶をつくっていた京都では、宇治田原郷の永谷宗円(ながたにそうえん)が1738年に宇治の煎茶の優品をつくり、伸煎茶の祖といわれたことから日本の緑茶発祥の地は宇治田原町といわれています。
現在、「茶(チャ)」を意味する世界各国の言葉は、中国広東語系の「チャ」と、福建語の「テー」の2つの系譜に分けるのが一般的です。日本では広東語系の 「チャ」から「茶」となり、福建語の「テー」はインド・トルコの「チャイ」、ヨーロッパ諸国の「テ」を経由して英国の「ティー」になったわけですね。
■カテキン=ポリフェノールの仲間だったの!?
カテキンはお茶の苦みの成分ですが、特保飲料などでその効能が広く知られています。カテキンはポリフェノールの一種で、前述のとおり強い抗酸化作用があります。
緑茶のカテキンはビタミンEの10倍の抗酸化作用があり、さらに最近の研究ではガン抑制には緑茶が1番効果的であると発表されています。それはカテキンが 細胞のガン化を予防すると同時に、緑茶に含まれるビタミンCが発ガン物質の作用を抑制する相乗効果をもたらすということ。
緑茶はお茶を発酵させずに作られるため、健康に良い生葉の成分(ビタミン類)をそのまま残すことができます。紅茶やウーロン茶などの発酵茶には、ビタミン類はほとんど含まれません。
■テアニンでまったり
テアニンはお茶の旨味成分で、アミノ酸の一種です。テアニンは水溶性でお湯に大変溶けやすいので、お茶の旨味(甘味)の元になっています。テアニンが多く含まれるのは「玉露茶」で、一煎目で約70%が溶け出してしまいます。
テアニンには神経細胞を保護する働きがあり、同時にリラックス作用があります。緑茶を飲むと心が落ち着き、気分が楽になるのはこのためです。脳波計で計測 するとアルファ波の出現が確認できます。ストレスの多い現代人には嬉しい効果ですね。緑茶にはほかに、虫歯予防、抗インフルエンザ作用、皮膚や粘膜の健康 維持などの効果があります。
コーヒーも緑茶も、体に良い効能があることが分りましたが、私たちは普段それを意識して飲んでいるわけではありません。「好きだから飲む」人が大半ですよね。それが嗜好品の嗜好品たる由縁です。
双方の効能を紹介してきましたが、そればかり気にしていると、せっかくの「コーヒーブレイク」「ティータイム」が楽しめません。コーヒーも緑茶も、いただくときの部屋の雰囲気や同席の相手、使うカップや湯飲み茶わんのデザインによってもずいぶん味が変わります。
すてきな相手と心温まるひとときがいつまでも楽しめますように。コーヒーも緑茶も、きっと一役かってくれますから。