【医療】知らないとコワイ「薬と食品の食べ合わせ」(平成24年12月号掲載)
知らないとコワイ「薬と食品の食べ合わせ」 〜薬を毒にしないために〜
■「お薬手帳」はお持ちですか?
病院で薬を処方されると、薬局で薬剤師さんがチェックして調剤してくれます。別の病院で薬を出してもらう時も、「お薬手帳」でどんな薬を出されているのか確認しますよね。
複数の薬を服用する場合、同じ効果のある薬が重複して処方されてないか、作用が打ち消されるような組み合わせになっていないかは素人では分かりません。それでも市販薬を飲む時などに、薬同士の飲み合わせが気になったりしますよね。
しかし、特別に指示を受けている人を除いて、食べ物と薬との「食べ合わせ」に気をつけている人はあまりいないのでは?
せっかく薬を飲んでいるのにその効果が得られなかったり、逆に体調を崩したりすることのないように、「食べ合わせ」に気をつけた方がいい食品をいくつか紹介します。
■注意が必要な食べ合わせ
■牛乳
カルシウムを摂取するために毎日牛乳を飲む人は多いと思います。この牛乳と薬の組み合わせでも、注意しなければならない場合があります。
□便秘薬と牛乳…腸で溶けるタイプの便秘薬(成分名:ビコサジル)は牛乳と一緒に飲むと胃酸が中和されて胃で溶けてしまい、効果がありませんし、吐き気を催す場合があります。
□制酸剤と牛乳…制酸剤(成分名:水酸化アルミニウムゲル)とは、胃酸を抑えるタイプの胃薬です。胃・十二指腸潰瘍や胃酸過多などの治療に用いられます。制酸剤と牛乳を一緒に飲むと高カルシウム血症となり、吐き気や食欲不振を起こす可能性があります。
■菓子類
□頭痛薬とあんこ…頭痛薬や総合感冒薬に含まれるアセトアミノフェンは炭水化物や糖質と結びつくと吸収が遅れ、いつまでたっても薬が効かない状態になることがあります。
洋菓子ではビスケットなども糖分が多く効き目を遅らせます。
主食であるごはんやパン、麺類なども炭水化物に分類されるので注意が必要です。
■海藻
□昆布とうがい薬
風邪が流行るこの季節、病院でうがい薬を処方してもらう機会も増えると思います。このうがい薬や市販されている喉用スプレーには「ヨード」という成分が含まれています。
ヨードは甲状腺ホルモンの合成に必須の元素ですが、多く摂りすぎると逆に甲状腺機能に異常をきたす原因になります。症状としては、倦怠感、むくみなどです。
昆布はヨードを多く含む食品です。昆布の加工品である昆布だしや昆布茶も同様です。日頃からこれらを好んで摂取している方は、うがい薬の服用で摂取過剰になる場合があるので、気をつけるようにしましょう。
■肉・魚類
□ 結核の薬とマグロ…イソニアジドという種類の結核の薬と、マグロなどのヒスタミンが含まれる魚を同時に摂取すると、嘔吐、発熱、頭痛が起きることがありま す。これはイソニアジドがヒスタミンの代謝を妨害するためです。ほかにはイワシ・カツオ・サンマなどもヒスタミンを多く含みます。
□胃腸薬と肉…胃酸を中和する作用の胃腸薬(成分名:水酸化アルミニウムゲル)は肉と一緒に摂取すると肉のタンパク質のリン酸と結びついて働きが弱くなります。消化促進を促すタイプの胃腸薬(成分:塩化カルニチンなど)は問題ありません。
■危険な食べ合わせ
■チーズ
チーズは牛乳と同様高タンパクでミネラル類、ビタミン類などの栄養価が豊富に含まれています。しかし、食べ合せによっては頭痛の原因になることも。
□ 風邪薬・鼻炎薬とチーズ…市販の鼻炎薬や総合感冒薬によく含まれる成分:塩酸フェニルプロパノールアミンと、チーズに含まれるチラミンが合わさると、頭痛 や発疹などの症状が出ることがあります。肺結核などに用いられるイニソアミドという薬を服用した場合も同様に顔面紅潮、頭痛などのアレルギーによく似た症 状が起きます。
これはこれらの薬の成分が、チラミンの肝臓での分解を遅らせるため。海外では死亡例もあるそうなので注意が必要です。
また、チラミンは赤ワインにも含まれるので、悪酔いの原因になることも。「赤ワインを飲み過ぎて悪酔いした」と思っていても、実はチラミンに過敏な体質なのかもしれません。
■納豆
納豆は日本が誇る発酵食品ですが、この食品に含まれる納豆菌が薬の効能を阻む場合があります。
□ 心臓病の薬と納豆…心臓病の薬(薬名:ワーファリン)と納豆の食べ合わせは厳禁です。ワーファリンは血液が固まるのを抑える薬ですが、納豆菌が体内で作り 出すビタミンKがワーファリンの効き目を弱めてしまいます。青汁、クロレラなども同様にビタミンKを多く含むので注意が必要です。
また、ワーファリンの効果はタマネギ・ブロッコリー・ホウレンソウを多く取ると弱まることがありますが、これらの野菜を加熱すれば影響ありません。
■野菜・果物
□血圧降下剤とグレープフルーツ…この飲み合わせはよく知られていますが、グレープフルーツジュースを一緒に取ると薬の血中濃度が上昇し、作用が増強されることがあります。
いわゆる「薬の効き過ぎ」で、低血圧症状を引き起こします。血圧降下剤にはたくさんの種類がありますがグレープフルーツとの相互作用が報告されているのはジヒドロピリジン系のCa拮抗剤です。
このほかにも薬と食品の食べ合わせには様々な注意すべきパターンがあります。気になる人は、かかりつけ薬局の薬剤師に相談すると良いでしょう。
なんらかの異常を感じた時に、その日の食事内容をメモしておくのも良いかも知れません。
そしてこれは、だれでも知っているけれど、意外と守られていないこと!
アルコールと薬は、
絶対飲み合わせてはいけません
忘・新年会のシーズン、風邪気味だからと宴会直前に風邪薬…はやめてくださいね。
■おまけ 薬と食品の食べ合わせでは、ありませんが…
■スポーツドリンク
最近ソフトドリンクやガムなどに
〝ゼロカロリー〟をうたったものが人気を得ています。これらの甘味成分に「糖アルコール」が使われている場合があります。
糖アルコールは非常に消化されにくい成分で、体内に入っても吸収されずに排出されるので甘くてもカロリーが〝ゼロ〟なのですが、その性質のせいでこれを含む食品を大量に摂取すると下痢を引き起こします。
スポーツドリンクにはこの糖アルコールを含む種類がたくさんあります。「冷たいスポーツドリンクの飲みすぎでお腹をこわした」とか「下痢をしないように部活の水筒には氷は入れない」というあなた、犯人は氷や冷えではないかもしれません。
※上記のようなことも想定に入れつつ、実際の薬は処方されています。医師・薬剤師の指示に従って薬を服用しましょう。薬の服用について、不安がある場合は、医師・薬剤師に相談しましょう。