【医療】リハビリテーション、2つの目標(平成24年9月号掲載)
みらいあグループ代表 下郷宏氏
リ ハビリテーションという言葉は誰でも知っています。しかし、多くの人はマッサージや骨折後の医療と思っています。もちろんマッサージもリハビリの一つです が、ほんの一部に過ぎません。骨折だけでなく脳卒中や心臓病・肺疾患、肺炎や手術後などのため、日常生活が制限されたり仕事に支障が出た時に、必要とされ る医療が「リハビリテーション」です。特に高齢者では、いったん病気や怪我で寝込むと、もとの生活にもどることは容易ではありません。すべてがもと通りに 治ることができない脳卒中では、手足の麻痺、言語障害、嚥下(注1)障害などの日常生活に大きな影響を与える障害を残します。障害をかかえて、少しでも人間らしい生活を続けることができるようにすることがリハビリテーションの目標です。
人間らしい生活をするために、私たちは「トイレでの排泄」と「口から食べる」ことが、1番重要と考えています。
■トイレでの排泄
トイレをベッドの上やおむつでしたいと思う人はいません。トイレは、いくつになっても、男でも、女でも誰にも見られたくない行為です。病気や高齢のため、 本当に仕方なく、泣く泣くベッドやおむつで用を足すことを少しでも減らしたいと思っています。単に、歩行できることが、リハビリテーションの目的ではあり ません。トイレまで歩き、下着を降ろし、用を足し、下着を上げ、歩いてもとの場所に戻る、この一連の動作ができてはじめて、リハビリテーションの目的が達 成されたことになります。
■口から食べること
健康な人にとって口から食べることは当たり前です。当たり前過ぎて、食べられない、食物を飲み込むことができない状態を想像することさえできません。しか し、病気や高齢のために、人間の1番の欲求である「食べる喜び」をかなえることができない方が大勢みえます。たとえ、胃ろう(注2)や点滴から栄養を取っている方でも、口から食べる喜びをあきらめないで欲しい、流動食の人は少しでも普段食べなれた食事をして欲しい。こうした願いをかなえるため、私たちは努力を惜しみません。
この2つの目的を達成するため、「みらいあ」グループでは蒲郡厚生館病院だけでなく、老人保健施設、在宅サービスでのリハビリテーションを通じて、回復期から慢性期までのリハビリテーションを提供します。
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(注1)嚥下(えんげ)…水分や食物を飲み込んで、胃に送り込むこと。
(注2)胃ろう…口から水分や食物などを摂取できない人の胃に直接チューブを通し、そこから流し込んで投与する処置。